第1章 最終話 私は死なない
久しぶりだな。この感覚……
「玲奈!殺しちゃだめって、言った!ちゃんと、忠告してた!なのに!!」
玲奈自身、何が起きているのかわかってないと思う。多分、初めてなんじゃないかな?本当の意味で人を剣で切ったのって。
「……え?」
「今!自分が何してるか!わかってるの!?その剣は今!何で染まってるの!?」
苺ちゃん、そんなに玲奈を責めないであげて。
「……え?違う……違うの……わた…………わた、し…は……」
やっと状況を呑み込んでくれたのかな。でも、ここまで動揺するとは思ってなかったよ。
「え?……り、莉音……」
私は首を横に降った。大丈夫だよ。私は死なないから。
「え?やだ……ねぇ、莉音!」
「早く剣を抜け!まずはそこからだ!」
あれ?どうしてみんなそんなに慌ててるの?あ、そっか。魔剣使いが死なないって言うのを知らないのか。まぁ、仕方ないよね。決闘中に死傷事件クラスのことが起きてるんだから。
「だめ!抜いちゃだめ!」
「はぁ!?何言ってんだ心!抜かなきゃ傷治せないだろ!」
う〜ん……まぁ抜いてくれない方が嬉しいかな。というか、なんで喋れないんだ?あ、そっか。口の中血でいっぱいだからか。
「そこで喧嘩しないで!いい。私が抜く。玲奈は離れて。将は玲奈のそばにいてあげて」
苺ちゃん、凄いね。こんな状況なのに、的確な判断できてる。
「莉音は死なないよ」
「え?」
「死なないし、死なせない。私なら、できる」
そう言うと、苺ちゃんは回復魔法で傷口を塞ぎながら剣を少しずつ抜いていく。結構な高等技術のはずなんだけどな〜。この子、本当の意味で魔法の天才みたい。
「やっと……抜けた」
一気に張り詰めていた集中を解いて、苺ちゃんは座り込んでしまった。
「……ごほっ……ご、めんね。あり……がとう」
「莉音!大丈夫なの!?」
「うん……だ、いじょ…………って……あれ?」
足に力が入らなくて、私は倒れてしまった。あれ?おかしいな……あ、軽く失血しちゃったか。
「え!?ちょ、ちょっと莉音!しっかりしてよ!」
「ううん……平気……ちょっと力が……はいらないだけ」
あ、こういう時に自分よりも周りが慌てるってほんとなんだね。まぁ、それは置いといて。ほんと、隠居してた間に私も弱ったな……まぁ!死にはしないさ。あと数分で動けるようになるはず。
「ねぇ、莉音」
「ん?……どうしたの?苺、ちゃん……」
「どうして、莉音は、そこまで自分を犠牲にするの?」
初めまして。九十九 疾風です。
これにて第1章は終わりです。
キリが悪い?いえいえ。こういう終わりなのです。
次回からは第2章となります。
これからも本作をよろしくお願いします!




