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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
最終章 第2次終末戦争編
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最終章 第79話 最後のピースサイン

 大きな魔力の激突は、ただの力のぶつけ合いであり、そこに技術も戦術も入り込む隙はどこにも無かった。

 戦況はほとんど互角。このままの状態がずっと続くのではないかと思えてしまう、そんな数分の戦いだった。しかし、その均衡は長く保たなかった。


「おや?もう限界ですか?さっきまでの力がなくなってきてますよ」

「……気のせいじゃない?私より……自分の、心配すれば?」

「言ってくれますね。では、これはどうでしょう」


 その言葉の直後、攻撃しようと接近していた苺の目の前で敵の魔神剣が蛇のようにうねうねと変型し始めた。先端が5本に分かれ、それぞれが意思を持っているかのように別々の方向から苺に向かって伸び始めた。


「……そういうこと……」

「さぁ行きなさい。私の剣よ!」

「……なら、私は……」


 普通の戦士であれば、一度距離をとるところを、苺は緩急を利用しながら突撃速度を加速させた。蛇のような剣は何度も苺を攻撃しようとして失敗していた。

 苺の中に迷いも、後悔も、恐怖も……そして、命を捨てることに対する躊躇さえも無くなっていた。そして、魔神剣を使ってこの戦場で莉音のために戦うと決めた覚悟の強さこそが、今の苺の全てだった。


「まさか、この形態の剣相手に突っ込んでくるとは思いませんでしたね」

「……そう」

「ですが、あなたは1つ勘違いをしているかもしれませんね。この剣は、分かれていても魔神剣本体をそのまま使うことが出来るのですよ!」


 苺の剣の間合いに敵が入ったとき、この瞬間を待っていたと言わんばかりに歪んだ笑みを顔に浮かべた。そして、間合いで勝っていた敵の剣が容赦なく苺の胸を貫き、加速していた苺の体に深く埋もれた。勝負は決した。2人とも、そう確信していた。我々の勝利だと。


「ふははは!これは私の勝ちですね!……おや?」

「……違う」

「い、いつの……間に!」

「私たちの……勝ち」


 敵の心臓を1本の剣が貫いた。その剣は真っ黒な炎と真っ赤な雷を纏っており、魔神剣から離れた蛇に最後の命令をしようとしていた敵を雷と炎で内側から追い打ちをかけた。

 少しずつ3人を囲っていた真っ赤な陣魔法が崩壊を始めた。確かに敵は、苺との勝負には勝った。だが、苺と心の2人には負けていた。苺の命を捨てた突撃は、陣魔法内の視界を狭くするための囮だった。


「苺……」

「うん……やったね、心」


 口から一筋の血を垂らしながら、敵をはさんで目の前にいる心に小さくピースサインをした。

 そしてその瞬間、莉音がこの場所にたどり着いたのだった。






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