最終章 第76話 2つの決着
「……これで、おしまい」
莉音は、2本の魔剣を駆使して一方的に2人目の襲撃者を仕留めた。途中で不意打ちを狙ってきた敵兵を利用して攻撃をしたり、気絶いたままのヘルミアードを盾にしたりと、莉音らしくないような卑怯な手を使ったが、それほどまで追い込まれていた証明に他ならなかった。
「ど……どうか…………我々の、命だけは……」
「……残念だね。その選択を捨てさせたのはあなたでしょ?」
「そ、それはそうだが……!」
「うん。じゃあね」
地面に並べた2人の首を、両手に持った剣で同時に貫き、外側に切り裂いた。
「……2人のところに急がなきゃ」
「行かせr――」
「邪魔」
莉音は持っていた2本の剣を体内に戻すと、壁のように立ち塞がる敵の間を縫うようにして、小型の魔法剣を用いて四肢を切り落としながら駆け抜けた。
少しして、莉音の目の前にいる敵が背中を向けた人たちに変わっていた。
「何が起きて……まさか」
その場所は、戦場とは思えないほどに静かだった。誰も武器を構えずに何かが終わるのをじっと待っている……そんな様子だった。
嫌な予感がした莉音は、その中心で何が起きているのかを確認するために、近くにいた敵の背中を踏み台にし、ついでに首を切り落として跳んだ。
空中から見えた光景は、この集団の中心、それもかなり離れた場所にある謎の半球状の結界と、それを囲むようにして突っ立っているおびただしいほどの敵兵だった。
「……あの結界、外から中の様子が見えないようになってる……見た感じ苺ちゃんも心もいないから、きっとあの中に……急がなきゃ」
着地地点を見極めながら、莉音は剣を構えた。結界がある場所にたどり着くまで、止まらずに走り抜けるために。
「待っててね……2人とも」
莉音の髪の毛がより一層水色に輝き始めた。
「……少し、本気でやらなきゃ私の方が保たないかも。無理矢理着地するしか……っておっと」
ちょうど届く位置にあった敵の肩に剣を突き刺し、その人の目の前にしゃがみ込むように着地し、新しい魔法剣を生成して大きくなぎ払うようにして振るった。そして、駆けた。邪魔することを許さず、理不尽に無抵抗の敵の命を奪い、血をかぶりながらただひたすらに。
「あと……あと少し……!」
莉音の目が少し先にある結界を捉えた。黒く淀んだ、あまりにもエゴに満ちた魔力の塊。その結界が苺のものではないことは確実だった。
そして莉音がたどり着き、結界をこじ開けようとしたとき、中から割れるように結界が壊れた。
さっきまで結界で隠されていた場所、その場所に現れたのは――
――莉音が見たことない敵と、その敵を刺している心と、敵に刺されている苺だった。




