第1章 第29話 決闘
「お待たせしました」
私は、玲奈に呼ばれて学園敷地の端っこにある草原のような場所に呼ばれた。
「別に。それでは、始めましょう。本当の意味での、戦いを」
この場所には、防護フィールドも無ければ剣から体を守る防具もない。また、周りに執行部以外の人の気配はなく、本当にただの草原だった。
「何があっても保証しませんってことですね。お互いに」
「そう。それくらいの覚悟を持ってないなら、私からの決闘を受けたのだから」
剣士として剣を交えるということは、“命を賭ける”ということ。
だから私は、その覚悟を持ってきた。まぁ、死なないんだけどね。身体的な意味で。
「うん。いつでもいいですよ」
「そう。じゃ、タイミングは苺に任せるね」
「え?うん……わかった」
玲奈から放たれている殺気は、普通の学生とは思えないほどに鋭く、そして強かった。
そっか……多分、君はそのさっき全てを乗せて剣を振るってくるんだろうね。じゃあ、受け止めてあげるよ。
「それじゃあ……でも、始める前に、一つだけ。2人とも、殺すの禁止。わかった?」
「わかってますよ」
「もちろん」
「そう……なら、始め」
苺の一言を合図に二人同時に地を蹴る。懐かしい感覚だ。本気で殺意を向けてきている相手に、あわよくば殺してくれと願いながら剣を向けるのは。
ギリィィィィン!!
火花とともに大きな金属音が鳴り響く。お互い、ほとんどゼロ距離で目を合わせ、すぐさま距離を取った。
「はぁ!」
「……」
再び玲奈が、私に向かって剣を向けてくる。受けることは可能。だけど、受けないことも可能。
わずかな苦悩の末、私は───
「え?」
「…………うっ……」
ボタボタと何かが地面に落ちる音がする。胸の真ん中を熱いのに冷たいものが貫いている感覚。
「おい!何やってるんだよ莉音!!」
喉の奥から何かが込み上げてきて、耐えきれなくなって吐き出した。
真っ赤な血を────
 




