最終章 第66話 魔剣の覚醒
私は、苺みたいに「こんなことがあった」とかはなくて……えっと、私が孤児院を出たのは苺と再会する1年前とかだった。
その時ってちょうど戦争がほとんど負けてたみたいな時だったから、院長に言われて孤児院にいた人たちを連れて逃げ出す感じで孤児院を出たの。途中で離れ離れになっちゃったんだけどね。
はぐれた後、私は何日かはぐれた人たちを探してひたすらに歩き回ってたんだけど、途中でなんか諦めちゃって、人を避けるようにして……それこそまるで旅みたいなことをしてた。孤児院から離れた世界って初めてだったから、迷ったり、わからないことまみれで困ったこともたくさんあったリもした。でも、その時間の全てが楽しかった。
それで、少ししてからちょっとした思いつきで孤児院を探し始めたんだ。でも、今考えればそんなこと本当に無謀だったし、そもそも1人で行動している時点で生きていることが奇跡だったのにね。
まぁ、察してるかもしれないけど、その後私はばっちり戦闘に巻き込まれてしまったわけで。
確か、孤児院が見えてきたときだったと思う。どこからともなく巨大な魔法が孤児院に飛んできて、近くにいた私を巻き込んで大爆発を起こした。と思う。正直、目の前が急に真っ白に光るし、風に吹き飛ばされて木か何かに叩きつけられて意識が飛びかけるし、周りは炎まみれになってるし。何が起きたのかわからなかった。でも、あの時は本当に「死ぬんだ」って思ったよ。
でも、生きてる。それは、私の中で魔剣が覚醒したから。
・・・
「……魔剣が覚醒……そっか。だから心は、魔剣を持ってたんだ」
「うん。最初からあったのか、途中で拾ったのかわからないけどね」
「えっと、1ついい?魔剣が覚醒したとき、何か光?みたいなのに包まれている感覚ってあった?」
「え?うん。それで、内側から何か溢れてくる感じがして……もしかして……?」
「うん。えっと、へびつかい座との戦いで、私が『始』を解放した時の事覚えてる?」
「えっと……あの時かなって言うのはなんとなく……って急に何?!」
莉音は心の胸に手を当て、その中にある魔剣に話しかけた。
魔剣の魔力は元々、莉音の中に存在している「無」が分かれたモノ。だからこそ、莉音の魔力は全ての魔剣と共鳴し、意思を通わせることができる。もちろん、魔剣そのものに宿っている記憶も。
「ちょ、ちょっと莉音?!いつまで触って……!」
「……うん。心も同じだね。魔剣使い。本物の」
「え?え……??」
「この話は長くなるから、心の話が終わってから話すよ。だから、今は自分の話に集中して?って、遮ったのは私だけどね」
「うぅ~……話しにくい……」
心は莉音の話の続きを気になりつつも、話し始めた。魔剣が覚醒した後の話を。




