最終章 第64話 解放と再開
私が孤児院を出たのは、確か心よりも前だったと思う。正直、魔神剣を私の中に封印されるまでの記憶はほとんど無いから、それからの話をするね。
・・・
気がついたとき、私は十字架にかけられてるみたいに剣に縛り付けられていた。動かそうと思っても動かせないし、ずっと誰かに話しかけられている感覚があった。
最初の頃は恐怖心と拒絶感だけしか無くて、話しかけてくる声を聞くことができなかった。でも、いつだったかな。その声がずっと前から近くにいてくれていたように感じた。その瞬間から、その声が鮮明に聞こえ始めた。
「お前は……何になりたいのだ?」
最初は、そんな言葉だった。なんて言えば良いかな。まるでおじいちゃんみたいな、そんな優しさを持った言葉だったと思う。
私はどう答えるのか、わからなかった。そのことを、あの剣はわかったんだと思う。少ししてから、剣は自分の話を始めた。この話は、本当に長くなるから、話すのは大まかな内容だけにするね。
剣はまず、私がここにいる理由から話してくれた。私がこの場所……誰にも扱えなくなっていた魔神剣を封じるために置かれたほこらの中に、縛り付けられているのかを。そして、その場所には誰も入ることができず、私の肉体が外的要因で破壊されるまで、剣の封印が解かれることはなく、私も開放されることがないこと。
その後、私は魔神剣とたくさん話をした。私が解放された後のことを、たくさん。例えば、私の体はどうなっていくのか、とか。私が、どうしていくのか、とか。本当に、生きて帰ることができるのか……とか。
そんな時間が本当に長く続いた後で、私はあの人に出逢った。
あの人は、一瞬で私を救ってくれた。
心は戦ったことがある、あの人のことだよ。あの人は、私にとって本当の英雄だったんだ。でもあの時、目の前にあの人はいなかった。
魔神剣はあの日、私に1つ、大切なものをくれた。それは今も、私の中で眠っている。だってそれは、私が持っている本当の最終手段で、今ここに存在していられる理由だから。
これが、私の2度目の人生の始まりだった。求められなかった、何もない自分だった人生をやり直す時間が始まった。だから私は、誰かを守れるようになりたくて、新しい力を手に入れるための旅を始めたんだ。