最終章 第62話 神域魔法
莉音達が奇襲を仕掛けてから数時間が経った頃、一通り暴れ終わった3人が、敵の中に円形に積み上げられた死体の山に囲まれた空間に集まっていた。
砂漠のように乾いていた道には血液でできた川が流れており、地獄とも形容できる場所に変えられていた。
「2人とも大丈夫そう?」
「ええ。でも、少し魔剣を使いすぎてる気がするわ」
「私も……魔力、ぎりぎり……」
「やっぱり……でも、休んでいる暇はなさそうだから今はこれ持ってて」
「これって?」
「私の魔力を直接渡すための端末。ひとまず、この場所はこのまま押し切っちゃいたいから、遠慮無く使って」
莉音は、疲れが表情に出始めた心と苺に水色の飴のような球体を渡してから、死体の山を越えて突撃しようとしている敵の方を向いた。
「ごめんね……本当は休んで欲しいんだけどね」
「ううん……気にしない」
「同じく!それに、莉音が戦ってくれてるのに、私が休むなんてできないもん」
「ありがとう、2人とも。あと少し、踏ん張ろう」
莉音達は剣を構え直し、真っ正面から突っ込んできた10万人ほどの敵を迎え撃った。
太陽が真上から戦場を照らし、その光を金属や血液が反射していたこの時間は、さっきまでの一方的な蹂躙に比べるとまだ戦いにはなっていた。世界連合側が本気で「戦い」に臨み始めたためでもあるが、それ以上に心と苺の肉体的、精神的疲弊が大きな原因だった。
「見つけたぞ!かかれー!!」
「「おーーーっ!!!」」
その上、世界連合側は移動中だった全ての兵をこの場所に集め始めていた。最大瞬間火力で攻めている莉音達に対して、世界連合は兵の量を利用した持久戦を仕掛けていた。
「心!苺ちゃん!」
「こんな時に何?!」
「……どう、したの?」
「お願い!2秒だけ持ちこたえて!」
「2秒!?わかったわ。やってみる!」
「……信じてる」
「ありがとう、2人とも」
莉音は、今攻めてきている100もの敵大隊の中心でかつ誰もいない場所に瞬時に移動した。
その場所で莉音は、剣を地面に突き立てて目を閉じ、剣先から地面に魔力を流し始めた。その直後、地面に巨大な魔法陣が展開され、死体の山を含めた約3000万人の足下が魔法陣に変わっていた。
「……神域魔法展開」
莉音が剣を地面に突き立てて魔法陣が展開されるまでの時間はわずか1.4秒。この魔法の攻撃対象は、「莉音」の魔力を持たない者。つまり、魔法陣の中にいる、莉音本人とその魔力の連絡端末を持っている心と苺以外。その全てである。
「第0次禁忌魔法『破滅』!!」