第4章 第48話 夜の話、秘密の時間
「え?!ちょ、ちょっと莉音!?」
急に服を脱ぎだした莉音を、玲奈は急いで止めようとしたが、それよりも前に莉音はボタンを外す手を止めた。
「……これが、証明」
「えっ……?証明って……」
「私が妖精だって証明。口で説明するより、こうした方が早いかなって思って」
「だ、だからって急に脱がなくてもいいじゃん!」
「でも、そうした方が見ちゃうでしょ?」
「私をなんだと思ってるの?!」
「実際ガン見だったじゃん」
「うっ……それは……」
莉音は、玲奈が自分の胸にある刻印を見たことを確認してから、急いで服を元に戻した。
「なんて、冗談だよ。でも、これで信じてくれる?」
「もちろんもちろん!それに、わざわざそんなサービ……じゃない。申し訳ないことしてもらわなくても信じるわよ!」
「……あれ?もしかして……私、相当恥ずかしいことしちゃった……?」
「そうよ!私の方が恥ずかしくなっちゃったじゃない!」
「えっと……まぁいっか。別に減るものじゃないし」
「なんで莉音はそんなに堂々としてるの?!」
「う~ん……襲われなければ何でもいいかなって」
「最低限過ぎるわよ……」
何事もなかったかのように服を整えてから、莉音は部屋の中をゆっくりと眺め始めた。理事長室に入ったのは、この学園に来たときが最初で最後だったので、莉音にとっては少し懐かしかった。
「どうしたの?何か気になることでもあったの?」
「ううん。でも、落ち着くな~って思って」
「私はまたいつあなたがさっきみたいな奇行に走るかわからなくて落ち着けないのだけど……」
「それって……もしかして望んでる?」
「違うから!何?もしかして溜まってるの?!」
「あはは。さすがに冗談だよ。それに、私に欲求はほとんど存在してないから。最近は食欲と睡眠欲が戻ってきてるけど」
「え?あ、そうなのね……ってそうじゃない!」
理事長室に置いてある来客用の座椅子に座りながら、莉音は玲奈をからかって遊んでいた。
これは、自分の認識の違いが原因で生まれた変な空気を変えるための莉音なりの気遣いだったのだが、完全に逆効果になってしまっていた。
「話戻すわよ。もう……莉音が最後の妖精族って言うのは、わかったわ。でも……」
「私がどうして妖精なのか。じゃない?」
「そうよ。前に、莉音は魔力を持っているせいで両親に捨てられたって言う話は聞いたけど……」
「うん。そのあとどうなったのかって話は……してなかったっけ?」
「えっと……神獣世界で2年間過ごしたって言うのと、その後にこの世界に戻ってきて孤児院に入ったって言うのは聞いたわ」
玲奈は莉音の正面に座ると、莉音のことを真剣なまなざしで見つめていた。
「それなら、あそこから話した方が良いかな。えっと、両親に捨てられた後、妖精族に拾われたんだ。それで、目が覚めたときに師匠に、君は今日から妖精族になった。って言われたの」
莉音は少し懐かしむように話を始めた。遙か昔の、儚かった頃の記憶を。




