表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第4章 学園序列戦
269/334

第4章 第42話 1つの約束

「さて……そろそろ帰ろっか。もう夜も更けてきたし」

「うん……そうね」


 莉音の言葉に、心は言葉が出なかった。このまま受け入れていいのか。それとも、この覚悟を否定する方が良いのか。あるいは……心には、その答えを即座に出すことができなかった。


「……?心、どうしたの?」

「何もない……ことはないこと、もうわかっちゃってるわよね」

「うん。もしかしてだけど……難しいこと考えてない?」

「莉音って……人の心が読める系女子?」

「なにそれ。でも、そうだね。少しだけならわかるよ。特に心はわかりやすいし」

「そ、そんなにかな?」


 2人で寮の中に入り、部屋に向かいながらさっきまでとは全く違うような話を続けた。そうこうしているうちに、部屋に着いた。その間に誰にも会わなかったのは、2人にとってある意味幸運だったかもしれない。

 部屋の中に入り、扉を閉めてすぐに、後ろから部屋に入った莉音が心に背中から抱きついた。


「え?!な、なに……!?」

「心はさ、私のこと、心配?」

「し、心配なんてそんなこと……」

「本当に?」

「それは……」

「ねぇ心……私は、心の本心が聞きたいな」


 莉音は何も取り繕っていなかった。その場所にいたのは、戦士としての莉音ではなく、すぐに壊れてしまいそうなほどに脆い、ただ1人の少女としての莉音だった。


「さっきの私の言葉、覚えてる?」

「さっきの……?」

「うん。『いつまでも世界と戦い続ける』っていう言葉」

「……うん。覚えてるよ」

「あの『私』と、この『私』は別だって……思ってくれる?」

「わかった……」

「私ね……時々寂しくなるんだ。ずっと一緒にいると思っていた存在が、もう遠い場所に行っちゃったから」

「あっ……」


 心は、莉音が何のことを話しているのかすぐにわかった。仲間や育て親の死。それが1人1人ですら乗り越えることは本当に難しいことなのに、それが急に続いて襲ってきたのだ。受け入れることができるだけで、十分すぎるほどにすごいことなのであった。


「正直ね……もう乗り越えられてたと思ってたの……でも、心の中がぽっかりと空いちゃったみたいになるときがあって……」

「……莉音って素直になると本当に子どもみたいになるよね」

「あはは……否定できないかな。でも、たまにはいいじゃん」

「ふふっ。そうだね」

「……ねぇ心、もう一度聞くよ。私のこと、心配?」

「……うん。とても」

「そっか……じゃあさ心、1つ、約束してくれる?」

「うん」


 莉音は心の体から離れ、飛び跳ねるようにして心の視界に入る場所に移動して、後ろで手を組んで無邪気に笑った。


「心、私のために生きてくれる?もし私が死んでも、また、出会える時まで」

「……わかった。約束するよ」


 心は、大きくうなずいた。絶対に、この約束を守るという覚悟を持って。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ