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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第4章 学園序列戦
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第4章 第29話 戦いは、終わるまでわからない

 機械音声によって開戦が告げられた瞬間、未彩が仕掛けた。

 重心を限界まで下げることで、本来弱点となる体格の小ささを長所に変え、低位置から急所を狙う攻撃。しかも未彩は、至近距離に近づくまで剣を持っていない状態を維持していた。


「うおっ!いきなり行くのか!」

「この一瞬で勝負を決める気か?!」

「どうした?!未彩のやつ剣を持ってないぞ?」

「捨て身か?!でもあいつに限ってそんなこと……」


 周囲の観客から驚愕と困惑の声が上がった。開始と同時に全力の一撃を相手にぶつける。その場にいる人の多くが、同じ展開を想像した。

 だが、その直後の展開は誰も予想できなかった。観客も、心も、莉音でさえも。


「え?上に飛んだ?」

「……そういうことか」


 ついたのは不意。本当の仕掛けはその先からであった。


「莉音どういうことなの?!あの動きは?」

「魔法剣を瞬間精製するって技術の利点の活かし方って感じかな。私はやってる側だったから、動きを見るのは初めてだったからわからなかった」

「えっと……?」


 莉音が説明している間に、戦場では上から攻撃を開始した未彩が優勢で戦いが進んでいた。しかし、一方的というわけではなく、浰馣もほぼ互角の戦いを演じていた。


「要するに、魔法剣を使ったことが無い人に対して有効な戦術。ただ、鷺広さんには効かなかったみたいだけどね」

「あ~、だからあそこまで互角になってるのね」

「でも、この戦いは……」

「どうしたの?」

「この均衡は、後保って数分かな」

「え?それってどういう――」


 思わず心が莉音の方を見ようとしたが、莉音によって強制的に戦場が見えるように固定された。


「ちゃんと見て」

「え、わかった……でも、なんでそんなことわかるの?」

「……あの2人は、確かに同じ実力、経験値、闘志を持ってる。でも」


 未だ戦況に変化はなく、それどころか徐々に浰馣側に傾き始めていた。


「魔法剣を『理解する』という点では、苑箕さんの方がずば抜けてる。今もずっと」

「『理解する』?」

「うん。戦いの運び方が特にね。例えば、魔法剣は戦況的に不利な方が戦いやすいとか」

「戦況的に不利な方が……?もしかして」

「そう。前回の戦いを見てないからわからないけど、この戦いはもう苑箕さんの手のひらの上だね。多分、本戦の経験が彼女を一番成長させたんだと思う」


 莉音の見守る先で、浰馣は体格差の利を活かして自分の戦場に未彩を連れ込んでいた。観客のほとんどは、最初の攻撃が原因で未彩は負けてしまうと思っていた。未彩の目に宿る、鬼とも、かの英雄とも言えるような、蒼く輝く光を見るまでは。


「……戦いは、終わるまでわからない。でもそれは、どちらも諦めず、油断していなかった場合」


 戦況、浰馣の勝利まであと少し。制限時間は残り2分を切った状況。


「一瞬の『勝った』という気持ち。その気持ちが、敗北につながる」


 莉音の声は消える。雪辱を果たしたと確信した浰馣の声によって――


「終わりだぁぁぁぁ!!!!!!!」











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