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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第1章 白夜学園編その①
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第1章 第24話 英雄の逸話

「ねぇ〜将」

「ん?どうした?」


  3つの空席がある机で、残された2人が暇を持て余していた。


「莉音のこと、どう思ってるの?」

「またその質問か。いつも言っているだろう。実力は認めてると」

「そこじゃないの」


  将はその時初めて苺と顔を合わせた。苺は武器を構えて将を睨んでいた。


「…………何のつもりだ?」

「私は将の本音が聞きたいだけ。別に剣で語り合えなんて、言ってない」

「にしては準備万端って感じだな」

「もう一度だけ聞く。莉音のこと、どう思ってる?」


  空気が張り詰めていた。2人は決して仲が悪い訳では無い。むしろ、お互いを良きライバルと思い、暇な時は手合わせなどをして高め合っている。

  だからこそ、中々本当の思いを言ってくれない将が気に入らないのだ。


「はぁ……やっぱり苺には敵わないや」


  ため息とともに読んでいた本を閉じた。将は──おそらく苺も──二人きりという空間だからこそ、本当の思いを交わそうとしている。


「莉音には俺がどう足掻いても勝てねぇ。それは剣の技術でも、魔法の熟練度でも」


  将は額に皺を寄せながら言葉にする。


「莉音は住んでる次元が違うと思った。正直、魔剣に関してはただの付属材料だ。あんなのがなくても莉音は充分強い」


  実際に剣を交えていない苺も、莉音の実力の底知れなさは痛感していた。でもそれは、執行部メンバーの中で唯一真っ向勝負した将の感じたものに遠く及ばない。


「苺は、英雄を知っているか?」

「英雄?ギルガメッシュなら」

「違う違う。ってか、逆になんでそこがわかるのか知りたいんだが……て、そうじゃなくて!」


  苺は知らなかった。この時将が口にした「英雄」とは、先の戦争の英雄のことであることに。だから、そういう返答をした。


「終末戦争の英雄『赤き青薔薇』。名前の由来は、水色に煌めく髪を振り回しながら戦う姿が青薔薇に重なったから…らしい」

「その英雄は、知ってる。たった一人で欧米連合を壊滅まで追い込んで、アジア連合に勝利をもたらした歴史上稀に見る英雄」

「そう。だが、その英雄には2つの逸話がある。まず1つ目。本当は『赤き』ではなく『紅き』なのではないかというもの」


  苺はどういうことか分からなかったが、将が紙に二つの漢字を書くと納得して頷いた。


「それで、もう1つは?」

「うん、こっちの方はあまり有名じゃない逸話なんだけど……」


  その逸話を聞いた瞬間、苺の目の色が変わった。そこには驚愕、恐怖、心配……様々な感情がごちゃごちゃになって現れていた。


「それを知ってるからこそ、味方であってくれて嬉しいし、正直に仲間と認めてる」


  そう、将は締めくくった。だが、苺の中ではその話は終わっていなかった。本人に確かめるべきではないのは分かってる。でも、確かめたいという衝動が体を動かそうとして止まらない。


「その気持ちもわかるが、今はまだその時じゃないよ、苺」

「うん……わかった」


  そして、生徒会室には静寂が帰ってきた。いずれ来るであろう3人を迎え入れるための。






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