第4章 第15話 自分の居場所
ひとしきり楽しんだ後、完全に日が沈んだのを見て解散となった。
「それにしても、莉音もあんなにはしゃぐこともあるんだね」
「まぁね~。滅多にないけど」
莉音と心は、未だに騒がしい学園の中を歩きながら、寮への道を歩いていた。
「そういえば、心は何してたの?」
「え?あ~……弧華と少し話してたの」
「そうだったんだ~。あ、もしかして私……完全に折っちゃった?」
「完全には折れてなかったけど、折れかけてたね」
「あちゃ~。さすがに言い過ぎちゃったかな」
「ううん。どのみちぶつかる壁だったわけだし、莉音が悪いわけじゃないよ。ただ、弧華にとって衝撃が強すぎただけ」
「う~ん……」
心の言葉を聞いた莉音は、少し考え込むように首をかしげた。
「どうしたの?」
「今日戦って思ったんだけど……この学園にいる人たちは、何を目指して戦ってるの?」
「あ~……それは完全に人それぞれなんだけど、基本的に二つに分かれるね。一つは魔法使い専門職に就職するために、護身術的な意味で戦いを覚えるって人。それでもう一つが――」
「自分の居場所を探すため……これであってる?」
「もう……莉音は鋭いな」
「なんとなくって感じだし、戦ってみてそう感じたって言うのが大きいかな。将も玲奈も、弧華さんも」
「さすがだね。正直、ここにいるほとんどの人が2つ目の方だと思うよ。魔力持ちに対する世間の目は、相変わらず厳しいまんまだし」
寮に近づくにつれて周囲の人の量も減っていき、寮周辺は莉音と心以外誰もいない程に閑散としていた。
「どうにか、少しでも魔力持ちが生きやすい世界になればいいのにね」
「うん……」
「莉音?どうしたの?入らないの?」
「えっと……ちょっと散歩してくるね」
「こんな時間から?別に良いけど、ちゃんと帰ってきてね?」
「大丈夫だよ。それじゃ、行ってくるね」
莉音はそう言うと、少し早足で寮とは逆方向に歩いて行った。その背中を見ながら、心は自分の部屋に向かうために階段に向かった。
階段を昇り、自分の部屋がある階についた心は、廊下の窓から校舎の屋上に莉音を見つけた。
「莉音……何してるんだろう?考え事でもしてるのかな」
心は窓を開け、少し身を乗り出すようにして莉音の表情を見ようとした。
「う~ん……何か考え事かな?でも、わざわざあんなところで?」
「あれ?心じゃん」
「え?あ、美鶴」
「心がこんなところで黄昏れてるって珍しいね。どうしたの?」
「黄昏れてると言うより、莉音がね……」
「莉音?そういえばいないね」
「あそこ」
心は学校の屋上の方を指さした。
「あんなところに……なにかあったの?」
「いや……特に何も。というか、美鶴起きたんだね」
「将に起こされた」
「あ~。そういうことね」
「私のことはいいの。莉音……本当に大丈夫?」
「そこは問題ないと思うけど……まぁ、莉音だし、大丈夫だと思う」
少しだけ様子を見て、2人それぞれ自分の部屋に戻ることにした。
美鶴は、莉音を信じた心を信じて。心は、莉音が必ず戻ってくることを信じて。