第4章 第14話 命がけの遊び
結局、苦し紛れに美鶴が出した案はしりとりだった。
「しりとりか~。初めてやるかも」
「そうなの?!莉音がやったことないって以外かも」
「まぁ……莉音だから」
「ちょっと?2人ともどういう意味?私にだってやったことないことくらいありますぅ!」
「まぁまぁ。さて、順番はどうするんだ?」
「あ!そうだね!それじゃあ……」
美鶴は将に隠れるようにして、莉音の反撃から逃れながら、しりとりを始めた。
「えっと!順番は私、将、莉音、苺ね!最初の文字は『り』から。りんご!」
「あ~……ごま」
「え?どういうこと?何か言えばいいの?」
「前の人の最後の文字から始まる単語を言えば良いだけ。莉音は『ま』から始まる単語を言えばいい。ただ、最後の文字が『ん』だと負けになるから、それだけは注意って感じだ」
「美鶴……せめて、説明……してから」
「ごめんごめん!ごめんって謝るからさ――」
美鶴は全力で謝りながら、将を盾にするように莉音から逃げ回っていた。
「だからその剣しまって!お願いだから!本当に反省してるから!!」
「え~?さっきから私を小馬鹿にしている気がしたからちょっとくらいいいかなって」
「だめ!だめだから!やめて!それで斬られたら私死んじゃう!!」
「え?大丈夫だよ死なない程度にしてあげるから」
「その笑顔が怖い!頼むから本当にやめて!!苺と将も助けてよ!!」
「知らん。そろそろ俺から離れろ」
「……自業自得」
「2人とも薄情すぎない?!」
そのまま生徒会室内でおいかけっこ(命がけ)を数分していると、不意に部屋の扉が開いた。
「……何の騒ぎ?」
「あ、心じゃん!良いところに」
心を見るなり、美鶴は心の後ろに隠れた。
「……莉音、その剣は?」
「え?ちょっとそこにいる可愛い可愛いいたずら猫を、すこ~し懲らしめるための剣だよ」
「莉音……何があったの?」
「えっと、暇だししりとりしようってなったんだけど」
「あ~、なんかわかったわ。とりあえず――」
心は優しく美鶴の肩をつかんでから、莉音に差し出すようにしてがっちりと固定した。
「ちょ、ちょっと心?!」
「一発くらいは喰らっときなさい」
「よし、美鶴」
完全におびえきった美鶴の顔が、今まで以上の絶望に染まっていく。その表情を見て、莉音は無邪気に笑いながら持っている剣を振り上げた。
「歯ぁ食いしばってね!」
「その笑顔がこ……ぎゃぁぁぁぁああ!!」
学園中に響くような声で、美鶴が断末魔もとい悲鳴をあげた。
「うるさ……莉音、やりすぎ……」
「え?何もしてないよ。ただ、斬られた感覚になるっていう剣を使って、縦に真っ二つにするみたいに斬っただけだよ?」
「でも、美鶴完全に気絶してるよ?」
「あ~……まぁいいでしょ」
莉音は完全に満足と言った感じで、剣を魔力に戻した。
「さて……満足したし、しりとり?再開しよっか」
「しりとり……出来るのかこの状況……」
完全に呆れた顔で、将は溜息をついた。
そのまま、美鶴を完全に放置したまましりとり大会が続けられた。ただのしりとりのはずだったのだが、謎に白熱した結果、結局夕方までやり続けていた。
もちろん、美鶴は放置されていた模様。




