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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第1章 白夜学園編その①
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第1章 第23話 満ちていく心

「ねぇ、何してるの?」


  私はその声を聞いた瞬間、嫌な予感がした。振り返るのが怖くて、私はずっとうつむいたまま次に誰かが声を発するのを待った。


「あれ?何か怒ってる声が聞こえたからどうしたのかな〜?なんて思ってきてみたら莉音と玲奈じゃん。なんか険悪な感じだけどどうしたの〜?」


  声の主はいつもと何ら変わらない感じで私たちの方に近づいてきた。


「お〜い。お〜ふた〜りさ〜ん」


  いつもなら、何も思わず振り向いて答えられただろう。でも、今はできない。何故なら……


「よし!莉音げっと〜!」


  後ろから何かが激突して来たなような衝撃。私は恐る恐る重みを感じる方の方に首を回した。


「お?やっとこっち見てくれた!にしし」


  そこには、弾けんばかりの笑顔の心の顔があった。


「こ、心……!?」

「いや〜、今日教室で見ないな〜なんて思ってたらこんな所にいたのか!いくら勉強が出来るからっておサボリはダメですよ〜お二人さん」


  私が怯えるような顔をしていたからだろうか。心は歌うようなテンポで話す。玲奈はさっきから心と目を合わせないようにしている。多分、さっきの話を聞かれていたと思ってるから……だと思う。


「あの……ね、心」

「そうだ!今日は莉音に美味しいクレープ屋さんを紹介しようと思ってたんだ!学校も終わったし、一緒に行こ!」

「え……あの」


  心は、私が言葉を言う前に手を引っ張って行く。少しずつ玲奈から離れていく。


「ほら!早く行かなきゃ売り切れちゃう!」


  謝ろうと思っていた私の心も、お礼を言おうと思っていた私の心も、何もかもを置いていってしまった。

  今、私の中に残ったのは空っぽの容器のような心だけ。


「にしし!ちょっと飛ばすよ!着いてこれるかな!」


  こんな私の心が、少しずつだけど満ちて行っているのかもしれない。だから、1番大切な心を置いてきぼりにしちゃってるんだ。


「もう……舐めないで」

「お?いい目付きになったね!」


  でも、もういいと思った。心がいる。それだけで、こんなにも満ち足りているのだから。


「もうそろそろだよ!」

「わかった!」


  だからこそ、私は大切なものを1つずつ失ってしまったのだと思う。






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