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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第4章 学園序列戦
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第4章 第11話 叶わぬ意志

 試合を終え、莉音はゆっくりと体育館から去って行った。


「……くそが」


 さっきまで戦っていた場所に寝転がった弧華は、他人事のように響いている戦闘音を聞きながら呟いた。

 少しずつ時間が経つにつれ、自分が負けた現実だけが這い寄ってくる。認めたくない、と思う余裕すら無いほど、弧華は完敗していた。


「私の剣は……軽い……」


 莉音が発した言葉をもう一度繰り返す。


「結局私は……去年から何も変わってなかった……」

「……そんなことはないよ。弧華」

「……心?」

「久しぶり。少し話さない?」


 心は弧華に手を差し伸べた。1年前の学園序列戦、本戦1回戦第4試合の時のように。


「いいよ。正直、心と話したいこともあるし」

「次の試合もあるだろうし、外に行こっか」


 弧華は心の手を取り立ち上がると、心とともに体育館の外に出た。


「それで、心はどうしてこんなところにいるの?ただの気まぐれってわけじゃなさそうだし」

「う~んとね、深い理由は無いんだけど……強いて言うなら、確認かな」

「確認?私が負けることのか?」

「違うよ。莉音がどれくらい本気で学園序列戦に挑むのかの確認。正直、勝敗は興味ないし」

「どれくらいって……さっきのが本気では無かったというのか?!」

「違うよ」


 弧華が感情的に発した言葉を、心は一瞬で否定した。それ以上言うのなら斬る。そう言わんばかりの圧力で。


「さっきの莉音は間違いなく本気だよ。だからこそ、微かな隙を狙ってかわし続けていた」

「かわし続けて……いた?受けるのでは無く?」

「うん。それに、莉音に一撃を与えるのは至難の業だよ?例えるなら……そうだね。生身で太陽に突入して生きて帰ってくるくらいには至難かな」

「いや、さすがにそれは不可能だから……」

「あはは。でも、自分から攻撃を受けにいく以外で攻撃受けているところ見たことないから、実質不可能なんじゃないかな」

「……その話をして、結局私に何が言いたいの?」


 歩いていた足を止め、弧華はまっすぐな眼を心に向けた。


「莉音と戦っている時、何か言われた?」

「……十分強いって、言われた」

「それが真実なんじゃない?莉音は変なお世辞は使わないから」


 心は少し笑いながら、ゆっくりと歩き始めた。


「弧華は、これからどうする?」

「……もっと強くなる。そして、また莉音と戦う時に度肝を抜いてやる」


 弧華の強い言葉を聞きながら、心は少し悲しい気持ちになった。



 莉音の命はもう、来年までは保たないことを、心は知っているから。







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