第4章 第4話 決着、そして
木刀と木刀が衝突する。木材同士の衝突とは思えないような衝撃音が空間に響く。
「……やるね」
「美鶴もね。でも、まだ足りないかな」
戦いが始まってから1分が経過した。その間に2人が動いた距離はわずかであったが、その間に行われている駆け引きの数は無限に近いものだった。
1歩でも読み間違えたら負けるという空気は、戦場そのものだった。
「そろそろ行くよ」
「え……?」
莉音の目が変わる。それと同時に髪の毛の色も白色から水色に変わっていく。それは、今までの駆け引きが全て前座であったかのような、そんな光景だった。
「さぁ、ちょっと本気で行くよ」
「さすがね。でも、私もやれる限りはやるよ」
「そうこなくっちゃね。でも、あくまでも本気で戦うのは本線の時だよ」
「そんなこと、分かってるわよ!」
2人は体育館の端から端まで大きく距離を取った。100メートル近く離れた2人は、全力で体育館の中央に向かって走り始める。
速度は、圧倒的に莉音の方が上だった。
「は……!?」
「よっと」
決着は、本当に一瞬だった。
・・・
体育館前で座っていた美鶴の元に、飲み物を持った莉音が戻ってきた。
「お疲れ様。はい、どうぞ」
「ありがとう」
莉音が差し出した清涼飲料水を受け取り、一気に半分くらいまで飲み干した美鶴の様子を見て少し笑いながら、莉音は美鶴の隣に腰を下ろした。
「それにしても、何でそんなに強いの?」
「う~ん……多分、人間だと無理かも。少なくとも、私と同じくらいの実力者に会ったことないから」
「人間には、無理……?」
「うん。あ、そっか。美鶴は知らないんだっけ」
何を言っているのか理解できないという表情で固まっている美鶴を横目で見て、莉音はどこか遠くを見ているような目で告げた。
「私、妖精族なんだ」
「ようせい……族?妖精族っって、あの?!」
「知ってるの?」
「知ってるも何も……え?でも妖精族って遙か昔に……」
「絶滅した。それは表向きの事実だよ。実際は、ごく少数だけ生き残ってるって感じだった。まぁ、それはそれでいいとして」
「いやいやいや!そこ割と重要だよ?!」
「まぁまぁ」
「妖精族」という単語に異常なまでの食いつきを見せる美鶴を落ち着かせながら、莉音は話を続けた。
「私は人間だったんだ。捨てられたの。私は、私の本当の両親に」




