第1章 第22話 悲痛な叫び
私は、いつから間違っていたのだろうか?
そんな疑問が頭の中を蝕んできた。でも、その疑問に答えはなく、それと同じように理由すら持たなかった。
「どうしたの?小難しい顔しちゃって」
「ううん、なんでもないよ」
隣で玲奈が心配そうに顔を覗き込んできた。まぁ、さっきの事があったから玲奈の性格なら心配するとは思うけど、でも今は逆にその心配が痛かった。
「そう?ならいいのだけど」
私の顔を見て察したのか、それともこれも優しさなのか、玲奈はそれ以上詮索してこなかった。
「…………」
「……」
お互い、無言の時間が続いている。気まずさはあるが、それだけが原因では無い。お互いが、理事長室での会話を受けてどの距離感でいるべきかねている。と思う。少なくとも私はそう。
「…………ねぇ、玲奈」
返事はない。でも、私は無言の肯定と見なして言葉を続ける。
「どうすれば良かったのかな……」
「私に聞いたってわかるはずないじゃない」
その声には、少しだけど怒りが込められている気がした。
「私は今、これまでにないくらい悩んでるの。どうしてだかわかる?」
私は首を横に振った。わからないよ。私には全くわからない。玲奈が私の告白に対して何を思い、何を感じて、何を今悩んでいるのか。
「そうよね。わからない。相手が思ってることなんて、口に出してもらわないとわからないの。それはあなたにも言えるの!」
「え?………」
予想外の言葉に私はキョトンとしてしまった。どう返すべき?わからない。
「これまでもそう。さっきのもそう!それに、莉音は覚えてないかもしれないけど、あの時だって……」
あの時?なんのこと?いつ?余計わからない。
「ごめん、最後のは忘れて……でも!莉音は一人で何もかも抱え込みすぎなの!もっと私を頼ってよ!苺を頼ってよ!将を頼ってよ!そして何より!」
そこで一旦言葉を切った。そして悲痛な叫びに似た声で最後の一人の名前を紡いだ。
「心を頼ってあげてよ!同じ部屋でしょ!それに、莉音は気づいてないかもしれないけど!本気で反対してるんだよ、心は!莉音が魔剣を使うことを!どうしてそれに気づいてあげられないの!?」
私は、何も言うことが出来なかった。気づけていなかったのだ。心のこと。だから、私には何も言い返せなかった。いや、言い返す資格すらないと思った。
「ごめん……なさい」
だから私は、そうやって謝るべき相手を間違えて謝ってしまった。自分でも何をやっているのだろうって思えた。私が玲奈の立場や、心の立場になった時、きっと怒り狂っているだろう。
ほんと、私の周りの人達は優しすぎるよ……
「ねぇ、何してるの?」
そんな時、背中から声が聞こえた。




