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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第4章 学園序列戦
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第4章 第2話 他愛もない話を

 莉音の言葉が信じられないという表情で美鶴は固まった。


「あれ?私何か変なこと言った?」

「ううん。でも、美鶴は……わからない、かも?」

「え?た、助け……え?」


 莉音の言葉の真意がわからずに考え込む美鶴をよそに、玲奈が大きな対戦表のようなものを机に広げた。


「そんなことより、早く本題に行くわよ。序列戦開始まであと半月くらいしかないんだから」

「そうだな。組み合わせと試合時間自体は前日発表な上にくじ引きで決まるから問題ないが、そろそろ個人個人の能力情報を出さなきゃいけない」

「わ、私はちょっと用事が〜……」

「心……逃げちゃダメ」

「うぅ〜……」

「えっと、具体的には何をするの?」

「そうね。莉音は初めてだし、心もどうせ覚えてないだろうから一応説明するわ」


 そう言うと玲奈は立ち上がり、ホワイトボードに図のようなものを書いた。


「まず、これが一人一人の情報の大まかな配置。ここに魔力値、近接戦、魔法、剣術、俊敏性、耐久力が数値化されて出てくるの」


 携帯端末の画面を横向きに置き、ちょうど中心を境に情報が分けられている。左上に顔写真を入れる枠が書かれており、玲奈は画面右側の部分をさしながら説明した。


「それで、ここが顔写真で、その下に戦闘能力値上の得意不得意が書かれている欄があるわ。ここは自動で記録される場所だから、不正とかは無理ね」

「なるほど。でもあれ?数値ってどうやって……あっ」

「莉音は察しが良くて助かるわ。さ、早く取りかかりましょ。美鶴もそんなところに突っ立ってないで、早く手伝って」

「え?何を?」

「情報入力」

「ま……まじで?」

「うん」


 満面の笑みで答える玲奈を前に、美鶴は溜息をつきながら作業を開始した。莉音はやり方を玲奈に教えてもらいながら数回やり、そこからは自力で自分の分の作業を進めた。


「今回の参加者って何人いるの?」

「えっと、初等部が5000人くらいで、中等部が8000人、高等部が1万2000人ね」

「ご、合計2万5000人の能力値をここにいる6人で?」

「そうよ。去年は5人でやったんだからもっと大変だったのよ?」

「が、頑張ります」


 静かな部屋の中でただただ数値を入力する音だけが響く。一日で入力可能な人数にも限界がある上に戦闘の疲れが残っている人が多かったため、この日は全員で約5000人の情報を入力して終わりにした。


「いやぁ〜、なかなか疲れ取れないわね」

「あんな連戦……一日で回復する方が、おかしい」

「え?!私がいない間に何があったの!?」

「そっか。美鶴にまだ説明してなかったっけ」


 玲奈が完全に忘れていたと言わんばかりに頭を掻いた。


「えっとね、皆崎(みなざき)が学園戦争なるものを始めて、全員で何度か死にかけながらとりあえず勝って」

「玲奈……さすがに雑」

「いいじゃない、ちゃんと話すと3日じゃ足りないんだから。まぁ、その後……美鶴が帰ってきたあの日まで、私たちは神獣と戦ってたのよ」

「神……獣?神獣ってあの、神獣?!」


「神獣」という名を聞いて、美鶴の顔が青ざめていった。


「あ、あなた達……よく生きてるね」

「私たちだけの力じゃなかったけどね。もしかしたらギリギリ会わなかったかもしれないけど、世界境界観測官の人も手伝ってくれたのよ。それでも首の皮一枚って戦いだったけどね」

「莉音、本当に頑張った」

「ううん、私だけじゃないよ。みんながいてくれたから戦えたんだよ」

「またまたご謙遜(けんそん)を〜」


 夕日に照らされた生徒会室で、執行部の全員が2つの大きな戦いについて話していた。その声には大きな達成感が満ちていて、美鶴は聞いているだけでその戦いに参加しているような気分になっていた。


「さぁ!今日は解散!ゆっくり休んで、明日の作業に備えよう!」


 玲奈がそう言うと、全員で話しながら生徒会室を後にした。他愛もない話を笑い合いながら。






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