第3章 第77話 束の間の再会
「私は……どこにいるんだろう?」
真っ暗な世界で、莉音はそっと目を開けた。深海にいるみたいで、少し心地いい世界だった。
「ここ……もしかして、私死んだの?」
莉音はその場で立ち上がり、ゆっくりと周りを見渡した。その空間には何もなく、そこはただただ無限に広がっている闇だった。
「何も聞こえてこない」
『果たして本当にそうか?』
「……え?」
莉音はどこからか獅子宮の声が聞こえた。聞こえてくるのは声だけで、莉音には獅子宮の姿が見えない。
『ソナタには、我の声が聞こえぬのか?』
「し……獅子宮?」
『やはり、こうなってしまったか』
獅子宮の声は、こうなることを想定していながらも、こうなってしまったことを悲しんでいるようだった。
『これが、ソナタに託す最後の贈り物だ』
「ねぇ……獅子宮」
莉音が獅子宮に触れようと手を伸ばした。その手は見事に宙を切り、莉音はそのままバランスを崩して倒れてしまった。
『ソナタには待っている者達がおるだろう。ソナタはその者達のために戻ってやれ。我から託すものは1つだけだ』
「……獅子宮……会いたいよ……」
『手を前に出せ』
莉音は獅子宮の声に従って左手を前に伸ばした。その手に優しく、暖かいものが触れる感覚があった。
「……そこにいたんだね……獅子宮」
『後は、信ずる仲間達とともに行くがよい』
その声を最後に、獅子宮の声は聞こえなくなり、何かに引っ張られるように意識が元の世界に帰っていく。左手に暖かいものを握りしめながら。
・・・
「ぅ……っん……」
「莉音さん!」
ボロボロの状態の莉音の目が少しずつ開いていく。ずっと莉音の手当にあたっていたヤウィーは、驚きのあまり叫んでいた。
「ヤ……ウィー?」
「しゃべらないでください!」
「……莉音生きてた……よかった」
莉音は状況を理解できていない様子だった。
「行か……なきゃ」
「だめです!まだ治癒が終わってないので!」
『あらぁ?そんな大声を出しても良いの~?』
「しまっ……!」
一瞬カール達の攻撃が止んだ時、へびつかい座が莉音とヤウィーの方を見た。龍護が襲撃を予測して莉音達とへびつかい座の間に入った。
『あなたたち邪魔しないでくれる?』
「莉音は絶対やらせねぇ!」
「えぇ!私たちが食い止めるわ!」
『うるさいわね。いいわ。あなたたちから消し炭にしてあげる』
そういうと、へびつかい座は紫色の魔力を右腕に集め始めた。
『恐れおののきなさい、この圧倒的力に』
莉音はヤウィーの制止を振り払って莉音は立ち上がり、立っているのすらやっとな状態で、足下には全身から流れている血が溜まっていく。
この時のへびつかい座は、完全に勝ちを確信していた。そう、この時は。




