第3章 第74話 そっちにも
神が自らの手下として神獣を召喚した時、失敗作として一人の少女が生まれた。その少女を神は神獣と呼ばず、失敗作として放置した。
その苦しみはやがて、少女を蝕み、やばて強大すぎる力を与えた。
それが、紫色の魔力であり「呪われた魔法」である。
・・・
へびつかい座の力は圧倒的だった。召喚される体長1メートルほどの蛇ですら1人1匹相手するのがやっとだった。
『あらぁ?その程度なのかしら?』
全員が蛇の対処に追われている様を眺めながら、へびつかい座は愉快に笑う。その間何も手を出さず、ただただ眺めているのみ。
『ただ……さすがに莉音とやらは、かなりやるわね。自分だけでなく仲間のサポートまでなんて。そんな余裕すぐなくしてあげるわ』
「……っ!魔力開伝!」
「この隙に……秘石魔法『星』」
莉音が一瞬で5体もの蛇を消滅させた隙に、ヤウィーが秘石魔法で全員を援護した。その一瞬で完全に蛇側の有利が消えた。
『やるじゃな〜い。なら、これならどうかしら?』
「くそっ!このままじゃ埒があかねぇ!何とか出来ねぇのか!」
「今考えて……って莉音まだ早い!」
心が何かを思いつく間もなく、莉音はへびつかい座に直接攻撃を仕掛けた。それを阻止しようとへびつかい座と莉音の間に入った蛇達を切り刻みながら。
『……来るのね』
「せやぁ!」
『でもね、お嬢ちゃん』
莉音の攻撃範囲にへびつかい座入る少し前に、へびつかい座は莉音に向かって右手を突き出した。
『正面突破は、無謀すぎじゃないかしら?』
「分かってる。でも、私は私の信じたことをやる」
『そう……残念ね』
莉音が剣を振る。その剣は寸分狂わずへびつかい座の腕を肘から切り落とす──はずだった。
「……え?」
『私の魔力は、呪われてるのよ』
紫色の魔力でできた障壁のようなものに阻まれ、莉音の剣は弾かれた。完全な隙。その隙をへびつかい座は見逃さなかった。
『ば〜い、勇敢なお嬢ちゃん』
「結界魔法第12門 真意壁!」
へびつかい座が放った魔法球が、莉音のすぐ目の前に現れた見えない障壁によって阻まれ、相殺されたかのように爆発した。
「うわっ!い、苺ちゃんありがとう」
「馬鹿……捨て身は……だめ」
「あはは……面目ない」
『そうか……くくくっ面白くなってきたわ!』
苺を見て何かを理解したのか、へびつかい座が不気味な声を上げて笑い始めた。
『……そちらにも、いたようね』
誰にも聞こえないような声でそう言うと、へびつかい座は100匹以上の蛇を召喚した。
『さぁ!まだまだ始まったばかりよ!』