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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第3章 神獣大戦
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第3章 第71話 笑い合いながら

『莉音を引き取った時、世界の戦争の渦に巻き込まれる運命は確定していた。莉音が戦争を終わらせるか、世界が滅ぶかの2択だった』


 獅子宮の言葉は重い。話すことすら辛そうだった。


『我は、修行と(めい)打って神獣の領域に踏み込む修練を続けた。間に合わせるために、我の世界時間を限界まで加速して』

「……神獣の領域に」

『ずっと我の力で魔力を抑えていたから気づかなかったと思うが、我がこの様だ。急激に魔力が上昇するのを感じただろう』

「そういう……ことだったんだ」


 莉音は納得して頷いた。獅子宮と出会った日の夢を見た日、あの日のことが莉音の中で繋がった。


『莉音らがこの世界に来た時から見ておったが……本当に、強くなったな。ちゃんとした形で戦いたかったと、神獣たち全員が思っているだろう。それに……』


 獅子宮の言葉が止まる。どのように言おうか迷っている様子だった。


「……『(イクリプス)』は、終末戦争中に使えるようになったんだ。あまり長時間は使えないんだけどね」

『その事ではない。ちゃんと見ていたからな。ただ、その時敵だった少女と一緒に戦ってある姿を見て驚いた。やはり、莉音は莉音だなと感じた』

「あはは。獅子宮までそんなこと言って……でもね、最初は気づいてなかったんだ。あの時の記憶はほとんど無いし」

『……2年』


 獅子宮がその言葉を発した時、莉音はビクリと体を強ばらせた。


『次使えば、もう耐えられないんじゃないのか?』

「というより、2年でも無理だったよ。私はもう一回使った、死ぬ」

『そうだろうな……あと、1年と言ったところか』

「うん。でも、いい仲間達と出逢えたから、もう後悔はないよ」

『もう一回は、もう決めてるんだな。だが、へびつかい座はかなり厳しいぞ。大丈夫か?』

「『青薔薇(ブルーローズ)』を使わなければいいだけ。それに、私はもう一本も持ってるから」


 莉音の「もう一本」という言葉が引っかかっている様子の獅子宮に、莉音は簡潔に答えを示した。


「『(カタストロフ)』……私は、2つの剣を持ってる」

『……そうか。違和感が解けた。なるほどな……さすがに、両方1度に使うことは厳しいのだろう?少なくとも、学園戦争だったか。の時にそれを使えばもっと楽に戦えていただろうに』

「さすがに同時は無理。それに、魔力暴走をさせずに『(イクリプス)』が使えるようになったのもその最後の方だったし……少しずつ本調子に戻ってきてはいるけど、まだまだ足りない」

『あぁ。でも、もう十分に戻ってきているのではないか?今の莉音ならもう一度戦争を止められると思うが』

「ううん。足らないよ。少なからず私は、あいつらに時間を与えてしまってるから」


 莉音はそう言うと立ち上がり、獅子宮に近づいた。


「だから獅子宮……最初で最後のわがまま、聞いてくれる?」

『あぁ』

「このまま、獅子宮の限界まで話してたい……他愛もないことも、大事なことも、たくさん」

『いいぞ。我も、久しぶりに話したいしな』


 2人は話し始めた。本当に他愛もないことから、世界の現状についてという大事なことまで、笑い合いながら。






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