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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第3章 神獣大戦
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第3章 第69話 認め合う

「それじゃあ、行ってくる」


 神獣世界に戻ってきてすぐ、莉音は獅子宮の扉に手をかけた。もう誰も止めようとしない。むしろ全員が全てを莉音に託し、信じている証拠であった。

 莉音の背中を全員が笑顔で見届けた。そして完全に莉音が獅子宮世界の中に消えていった後、堪えていたものを吐き出すように龍護がつぶやいた。


「本当に……大丈夫かな」

「信じよう龍護。莉音は、強い」

「なんか、お前に言われると不思議だな。そもそも、将はあいつのこと知ってたのか?」

「まぁな。正直、あいつが学園に入ってすぐの時は全くもって実力は信じてなかったし、そのことに関して玲奈に問い詰めた」


 将は肩をすくめながら龍護に話した。


「その次の日に莉音と戦ったんだけどな。その時のことは今でも鮮明に覚えてるよ。互角の戦いだと思ってたんだよ。戦う前は一瞬で勝てると思ってた。でも、不意を突いたはずの攻撃は完璧に防がれ、互角の勝負を演じるかのように遊ばれてた感じだった」

「あ~、そっか。さすがに俺も今の莉音と戦って健闘できる気はしてない。昔なら普通に勝てたんだけどな」

「か、勝てたのか……?」

「まぁな。でも、あの頃は全く力扱えてなかったし、心理戦にめっぽう弱かったからな。俺はそこにつけ込んだだけ。ただのまぐれ」

「謙遜はよせ。莉音は、クロノア団最強はお前だと言っていた。それに嘘はないと思ってるし、現に本当に強いと実感している」

「それはお前もな。シェリーと同じ種類の剣使っているやつ初めて見たぞ。その剣、扱うのにかなりの練度がいるだろ?将も十分つえぇよ」


 かつては敵だったもの同士がお互いの実力を認め合っている。そこに敵対心は一切無く、純粋な敬意だった。


「あそこの二人、すごいね」

「どうしたの心?うらやましくなっちゃったの?」

「ううん。でも、龍護は敵味方の判断をきっぱりとできる。昔は敵だったはずなのに、今はもうお互いに認め合えてる」

「なるほどね。実はね、私たちの敵はクロノア団というより莉音本人だけだったのよ」

「それは……『イクリプス』が目的で?」

「う~ん、半分そうだけど半分違うわ。元々は研究機関だったけど、その実験体として莉音が選ばれたのよ。だから、生きて捕らえろというのが最初の上からの指令」


 2人に聞こえるか聞こえないかの位置で玲奈と心が話している。その内容は、心には到底理解できないものだった。


「でも、今は莉音と戦おうなんて思わないわ。あの時は……何で戦ったのか分からないし」

「あ~……そんなこともあったね。でも、莉音はそんなこと忘れちゃってると思うよ」

「そうだね。莉音だものね」


 2人で顔を見合わせた後に莉音が入っていった扉を見る。その中で何が行われているのか、誰にも分からない。ただ、全員が信じているものは同じだった。






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