第3章 第66話 突然の開戦
神獣世界に帰ってきたとき、心は龍護と話していた。
「ねぇ龍護、莉音ってすごいね」
「あぁ。でも、あそこまでぐらぐらになった莉音は見たことねぇな。まぁ、きっかけはカールだったけど」
「あはは。それにしても、カールはどうしてあんなこと聞いたのかな?」
「さぁな。でも、カールにはカールなりの考えがあってのことだと思う。あいつは無意味なことはしないし、それに……」
「それに?」
龍護はそこで少し言いよどむが、心の目を見て1つ溜息をついてその先を言葉にした。
「……莉音は何もかもを一人で抱えちまう。神獣のことについても、俺たちはこの戦いが始まるってなって初めて知ったし、戦争のこともさっき初めて話した。他にも理由はあるんだろうけど、結果として莉音の顔つきは前よりも良くなった」
「うん。そうだね」
「ま、正直カールは起用に不器用なことをするやつだからな。もう少し他の方法はなかったのかって言いたいけど、良い方向に向かったから俺としてはもう関係ない」
「そうゆうさっぱりとしているところは龍護らしいね」
「お、おう?そうか?」
「あはは。照れてる~」
「か、からかうんじゃねぇ」
心は歩きながら龍護のほほを軽くつつく。その光景を見て莉音は苦笑いをした。
「二人とも~。いちゃいちゃするのは良いけど、戦いになったらそういうのはなしで頼むよ?戦場でそんなことしてたらただ死ぬだけだからね」
「い、イチャイチャなんてしてねぇよ!」
「はいはい分かったから。とりあえず、今から金牛宮世界に入るよ。多分、出会ってすぐに戦闘になると思うから、今のうちに準備しといてね。ヤウィーは秘石魔法よろしく。できれば、ダメージ軽減と魔力増強があればありがたい」
「はい!秘石魔法『無尽』『補強』」
莉音は全員の準備が完了したことを確認すると、自分の剣を腰から抜き、金牛宮世界の入り口の扉に手を当てた。
「次のことは考えない!全身全霊でこの先の戦いを乗り越えよう!」
莉音の合図で全員同時に金牛宮世界へと入る。次の瞬間、全員が目にしたのは残酷すぎるまでの現実だった。
「っく?!」
『おらおらぁ!そんんあもんかよおらぁ!』
莉音が受け止めているから全滅は避けられたものの、一歩間違えれば全滅していた。
「第3魔剣 解放!」
『うお?!良いこと狙うじゃねぇか!』
「ありがとう心。ひとまず……」
目の前でいったん距離をとった金牛宮は、闘牛のような見た目をした体高4メートルはある牛だった。
「第0魔剣『無』」
『ほう?いいもん持ってんじゃねぇか!燃えてきたぁぁ!!』
戦いの始まりは本当に突然だった。




