第3章 第65話 私が保証する
「私が昔……莉音の殺害依頼を受けてたのって知ってる?」
玲奈はずっと隠していたことを将に打ち明けた。
「俺は知らない。少なくとも、それは上からの依頼だろう?そもそも、俺が宝剣を手に入れたのは戦争が終わってからだ。戦いに関しては玲奈の専門だったろ?」
「そうなんだけどね。じゃあ、なんで私が莉音の実力に関して将に怒ったのかわかる?」
「あの時はさっぱりだった。戦えば分かるっていうのは本当だったが、玲奈があそこまで怒る事なんて珍しかったからな。何かあるのか?」
将が玲奈に聞いたとき、莉音が二人の間に生まれている空気に気付いてそっと近寄った。
「うん。私は、莉音に負けたの。それも、完璧にね。私は宝剣を全開状態で戦ったのに、足下にも及ばなかった」
「そっか。君があの時の少女だったんだね」
「え?!莉音、聞いてたの……?」
「全部は聞いてないよ。でも……そっかぁ~、玲奈だったんだ。あの時私を完璧に足止めしてたの」
玲奈は、優しい表情で話している莉音が本当に自分のことを言っているのか分からなかった。
「私は戦争中、基本的にはずっと走り続けてた。敵の本拠地を完全停止させるためにね」
「私は……本地の最終門番みたいな感じで戦場に送られて……」
「怖かった?」
「……うん。人間じゃないって思った。返り血を全身に浴びて真っ赤になってて、生きてるのが不思議な顔で……それでいて髪の毛だけは綺麗に煌めいていて」
「そっか……君はちゃんと戦ってたよ。私が保証する。それに、玲奈は2年間……ううん、今も、あの日の私と戦い続けてるんでしょ?」
玲奈は無言でうなずいた。
「なら、もう十分だよ。玲奈は、あの日の『玲奈』を超えてるよ。それに、玲奈は私の中でもめちゃくちゃ苦戦させられた相手の一人だから」
「もう……莉音はずるいよ」
「えへへ。でも、元気になれたでしょ?」
「うん。今は、莉音が仲間で本当に嬉しいわ」
「私も、玲奈が仲間で嬉しいよ。もちろん、将もね」
「なんだよ。俺は取って付けたみたいな。まぁ、俺もお前が仲間で心強いさ」
莉音がクロノア団に言っていた「『敵』という存在は敵じゃない」という言葉がそこにあった。かつて戦っていた3人の間に、もう敵という概念は存在していなかった。
「さぁ、次は金牛宮!一瞬の油断が死に直結する。全員、生きて帰ろう!」
莉音は全員に呼びかける。莉音のその言葉は、金牛宮がどれほど危険な存在かを物語っていた。
「よし、行くぞ!最期まであと少しだ!!」
「そうだね。みんな」
莉音はもう一度全員に向かって呼びかける。さっきとは違う、大きな一歩を踏み出すための言葉を。
「勝とう。絶対に!!」
「「おう!!」」