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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第3章 神獣大戦
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第3章 第45話 託された想い

『私、あなたたちがここに来てからずっと見守ってたの』


 白羊宮はどこからか水晶玉のようなものを取り出し、それを二人に見せた。そこにはそれぞれの世界で戦っている全員の姿が映っていた。


「これは?」

『私の能力で生み出したものの一つ。実は、終末戦争の時もここからずっと莉音のことを見てたの。獅子宮に頼まれてね』

「……白羊宮は、戦争……終末戦争を見て、何を感じた?」

『ふふっ。その質問はさすがに1本取られたわね。先に、あなたたちの感じたものを教えて貰えないかしら?』

「……俺は、人間はやっぱ人間止まりなんだなって思った。俺自身、直接戦場に立ったわけじゃねぇけど、戦後に世界が発表した話、『戦後録』に書かれていたこと。その全てを踏まえて」

「私は……莉音が、本当に可哀想だって思いました。戦争を終わらせるために命懸けで戦って、それで得られたものは何も無い……あまりにも理不尽すぎると……思いました」

『そう』


 白羊宮は2人の言葉を、目を閉じて噛みしめるように聞いていた。2人の話が終わると、いたずらに少し笑った。


『あなたたちなら知っていると思っていたのだけど。ねぇ、「戦後録」の作者の名前、わかる?』

「えっと……確か、神楽宮 莉緒?」

『ふふっ。それ、実は莉音のペンネームなのよ。莉音は、獅子宮から全てを聞いていた。過去も、未来も。だから、それをいちばん自然な形で世界に残そうとしたの』

「それが……『戦後録』と、『世界神剣録』?」

『えぇ』


 白羊宮は表情を一気に引きしめ、カールとシェリーに最後の願いを託す。


『莉音は、この先もう一度大きな戦争を鎮めるために命懸けの戦いに身を投じるわ。でも、それ以上に莉音は今相当不安定な状態にあるの。次に、あなた達は4大神獣と戦うことになるわ。その時には、ちゃんとそばで莉音を支えてあげてほしいの』

「あぁ。もちろんだ」

「そのために私たちはここにいるんですから」

『頼もしいわ……莉音は、あと少しで遥か高みへと達するわ。それまでは、魔力も精神も本当に不安定。今も、少しでも間違えたら崩れちゃいそうなくらい。でも、きっと莉音は乗り越えられる。だから、信じてあげて』


 白羊宮の声から徐々に力が無くなっていく。世界を見守り、はるか昔から生きていた命の灯火が、今消えようとしていた。


『最後に……シェリー』

「は、はい!」

『あなたは、もっと自分に自信を持つこと。それさえ出来れば、あなたは莉音と並んで戦えるわ』

「はい……ありがとう、ございます……」

『そしてカール』

「おう」

『あなたに私から言うことはこれだけ……もう少しくらい、莉音を頼ってあげて。あの子は……莉音は、きっと寂しがってるはずだから』

「わかった。頼ってもいいなら、ありがたく頼るよ」

『えぇ……ありがとう、シェリー、カール……最期に出逢えたのがあなた達で、本当に良かったわ』


 白羊宮は、その言葉を最後に魔力の粒子となって空気中に分散していく。最後、2つの魔力の粒子が、カールとシェリーの胸の中に入った。


「……なぁ、シェリー」

「どうしたの?」

「莉音は、さ……本当に、辛いんだな」

「そうね……あまりに長すぎる時間を、この世界で過ごしてたから……なのに、莉音は……」

「あぁ。多分、誰も分かりゃしねぇようにしてるんだろうな。ほんと、莉音はすげぇ。俺たちはずっと助けられてばっかだ」


 カールは立ち上がり、右の拳を左の手のひらにぶつけた。


「だから、これからは俺たちが莉音を助ける」

「えぇ。そのためにも」


 2人は胸に手を当てた。未だたしかに残っている白羊宮の温かい想いを感じ取るように。


「今自分に出来る精一杯をやるぞ!」

「えぇ!」







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