第1章 第17話 心の暴走
「ほんとごめんってば!ねぇ、許してよ〜」
「嫌です。あと、気持ち悪いのであまり引っ付かないでください」
「うわぁぁん!莉音に嫌われちゃったよぉ!!」
少しでも早く寝たい私は、泣きながら足にしがみついてくる心を冷たく振り払いながら寝室に向かっていた。
どうしてこうなったのか。それはつい数十分前に溯る。
・・・
夕食を済ませてゆったりとリビングでくつろいでいた私は、まるでそれが普通であるかのように幸せそうな日常を報道しているテレビを見ていた。
「いやぁ〜、やっぱ風呂はいいね〜」
「ねぇ心、この時期に全裸は体に響くよ。早く服きた方がいい」
「え〜?いいじゃん。そうだ!莉音も裸になればこの良さがわかるんじゃ!?」
「ちょ、ちょっと心?!や、やめてよ!私はこれが一番落ち着くからもう充分!!」
私は寝る時は基本的に真っ白のワンピースを着ている。あまりフリフリしてない質素な感じのやつで、隠居生活中からお世話になっていて、これじゃなきゃ眠れない。いや、まぁそれは良いとして、それを脱がそうとして来る心は一体どういう精神してるの!?
「ほらほら〜、そんな脱がせやすい服着ちゃって〜。誘ってるんでしょ?」
「誘ってない!それに!右手で脱がそうとしながら左手で変なところいじるのをやめて!」
酔っ払ってるの!?頭おかしい人とは思ってたけどついに壊れたの!?
「きゃあ!?う……や、やめ……うぁ……」
「ほらほらどうしちゃったのかな〜?ここかな?ここが弱いのかな〜?」
「ほ、ほん……んぁ……やめ……ぁ…ぅあ……」
や、やばい……もう魔法を使ってでも無理やり引き離すしか……
「あれれ〜?どうしちゃったのかな〜?気持ちいいならもっと素直にき───」
「う……風烈斬!!」
「え!?ちょ、うわぁぁ!!!」
「はぁ……はぁ……危なかった…」
加減したとはいえ、全裸の状態で風魔法なんかくらったら容易く吹き飛ぶ。案の定、心は天井近くまで上がって素っ頓狂な声を上げて落ちてきた。
「ぐへぇ!」
「はぁ……これは仕返しです!凍結檻」
「え!?ちょ……」
そこから先が音になることは無かった。心は魔法の氷の中に閉じこめられた。その姿はあまりにも滑稽で、普通の人が見たら笑ってしまうだろう。でも、私はそんな余裕は無かった。
「そこで2時間たっぷりと反省してください!!」
聞こえているかわからないがそう言い捨てて私は服を整えながら自室に向かった。もちろん勉強をするためであって続きをするためじゃないよ。決して違うからね!!
・・・
それから2時間。
そして今の状況がこれである。心はやっと服を着てくれたが、相変わらず私の体を触ろうとしてくる。
「もうやめてください。通報しますよ」
「それだけは!それだけはご勘弁を!あと敬語やめて!怖いから敬語はやめて!」
「ちゃんと反省しているのならやめます。でも、今のままじゃなんの反省も見えないのでやめません。わかりましたか?」
「はい……ぐすん」
心が涙目で訴えてくる。あのね、ものすごく言いたいんだ。
泣きたいのはどっちだよ!?




