第3章 41話 終わったらみんなで
「……ぉんは……」
「え?」
「莉音は……それでいいの?」
莉音に撫でられていた苺は、悔しさに震えながら言った。莉音の顔も見れないまま。
「うん。さっき、双魚宮に攻撃した時かな。もう後戻り出来ないって、改めて感じさせられたから」
「それだけ……なの?」
「うん。それだけ」
「……莉音、またはぐらかした」
「え?」
莉音の手が止まる。苺は顔を上げ、まっすぐ莉音の目を見た。
「私たちに言ってない……本当のこと。言って?」
「あはは……やっぱり、苺ちゃんには敵わないや」
莉音は観念したかのように、張り詰めていた何かをとっぱらってふにゃりと笑った。
「獅子宮と接触した日からね、私の中で魔力が溢れて止まらないの……今この瞬間も、ずっと」
「それって……魔力暴走?」
「少し違う、かな。私の場合、師匠にある程度の魔力で抑えてもらってたの。でも、それが決壊した。理由は分からないけど」
そして莉音は、このままだともう1年も経たずに自分が死ぬと言った。それを聞いたヤウィーは声を失い、苺は1つ深呼吸をした。
「だから、さっき……」
「うん。急激に魔力が膨張したのは、それが原因」
「そう……だから、私たちを突き放そうとしたの?」
「そう……だよ。これ以上、私に関わったら……絶対に苦しい思いをす……」
その先の言葉は出なかった。いや、出させなかった。
「それ以上は、怒るよ」
「苺……ちゃん?」
「確かに、別れは辛い……でも、今突き放される方が辛い」
「でも、わた」
パチン
乾いた音が響く。莉音の頬をビンタした苺の手は、震えていた。
「1年で死ぬなら……莉音が死ぬまで一緒に、いたい……だから、突き放さないで……」
声が震えている。苺は、ぐちゃぐちゃなままの感情を乗せた言葉を莉音にぶつけた。
「莉音は……強い。でも、全部1人で抱える。辛くても……苦しくても……私、嫌だよ……莉音が、苦しそうな顔、するの……」
「苺ちゃん……」
「全てとは言わない……私を頼ってとも言わない……ねぇ、莉音……もう1回でも、いいの……心の底から、笑ってよ……」
苺の頬を涙が伝う。苺の思いは、全て言葉になって莉音へと向かっていった。
「わかった……それじゃあ、さ」
「……うん」
「この戦いが終わったら、2人で……ううん、みんなで、一緒に笑お」
「うん……!」
莉音は、状況が理解できなくて放心状態のヤウィーと涙を拭っている苺を連れ、急いで出口に向かった。
そこには、いつもの莉音が戻っていた。




