第3章 第36話 繋げているもの
「なぁ、これって本格的にやばいんじゃないか?」
「うん……とりあえず、全力で迎え撃つわよ!」
明らかに今までと違う雰囲気に、2人は完全に身構える。一度しまいかけていた宝剣をもう一度解放した。
『グルルルル』
「なぁ、こいつ……」
完全に目が血走っている磨羯宮は、全力突進の構えをし、そして2人に向かってさっきまでと同様の速度で、あるいはもっと速い速度で突進してくる。そう思っていた。
「もう……」
「えぇ。これ以上は……」
『グガァッ!』
だが、頭部の傷口から大量の真っ赤な液体を噴出し、磨羯宮は突進体制のまま倒れた。
「やはり、限界だったか」
「多分、もう死んでたんだと思うの。私、攻撃したときにまるで死体でも攻撃しているかのような感じだった。でも、頭のどこかに核みたいなのがあるかなって思ったから滅多刺しみたいな感じにしたの」
「そしたら、どれか1本が核を貫いたと言うことか」
「そういうこと。でも、少し可哀想なことをしちゃったかもしれないわね」
「仕方ない。これが戦いだ」
将は冷淡に吐き捨てつつも、磨羯宮の凄惨すぎる状態に同情したのか、少し哀れむように見ていた。
「さぁ、私たちは戻りましょ。あまり長居するのはよくないと思うわ」
「そうだな。なぁ玲奈」
「何よ?」
「ずっと気になっていたのだが、莉音はどうして俺たち2人にしたんだろう。俺と龍護でも問題は無かったと思うが」
「あるよ。今はないかもしれないけど」
玲奈は歩きながら将の質問に答える。何かを押し殺しているかのような声で。
「少なくとも、私たちが今こうしてクロノア団と共闘できているのは、莉音が繋げてくれているからだと思うの。それに、莉音はこの世界について……細かく言えば、神獣についてここにいる誰よりも知っているわ。」
「つまり、一時的に分けるとはいえ2人協力しなければ倒せない。そういうことか?」
「うん。でも、それだけじゃないと思うの。私には莉音の考えてることがよくわからない時があるの。でも、信じて間違いは無いと思ってるわ」
「あぁ。それは俺も同じだ」
磨羯宮世界の崩壊が始まる。砂漠の上にある綺麗な星空が、壊れた天井のように割れて降ってくる。その世界の出入り口で、2人はもう一度世界を振り返る。世界に取り残された磨羯宮は、不思議と笑っているような気がした。