第3章 第31話 無情
「ねぇ、天蠍宮ってどんな敵が出るの?」
「なんだシェリー知らねぇのか?天蠍宮ってのはさそり座の別称みたいなもんだ。敵がどんな能力持ってるかは知らねぇが、多分能力相性的にはこちらが有利だ」
シェリーとカールが入った天蠍宮世界は、古代遺跡のような場所だった。その場所は部屋と通路が多少入り組んではいるものの、そこまで複雑ではなかった。
「多分、この部屋にいる」
「わかったわ。それじゃ、剣の準備をしておく」
「よし……龍属性魔法『纏』」
「最後の宝剣『不可侵』」
カールはシェリーが剣を解放したことを確認すると、目の前の扉を全力で殴り飛ばした。岩でできていた扉は簡単に破壊され、部屋の中に入ることが出来た。
『何者だ?余の部屋に無断で入ってきたのは』
「悪ぃな。先に仕掛けさせてもらう!龍属性魔法『紫電』!」
「せやぁ!!」
カールが放った紫色に迸る雷と、シェリーの剣が天蠍宮を完璧にとらえた。奇襲とはいえ多少のダメージは期待できる……はずだった。
『いきなりとはな。だが、君たちは相手が悪かったらしい』
「なっ?!」
「どうして……?」
『余の能力は生半可な力では太刀打ちできんぞ。さぁ挑戦者よ、余の絶対防壁を突破してみなさい。ただし、余からは一切攻撃はしない』
そして、部屋の奥で天蠍宮は動かず、じっと攻撃が来るのを待っているうだった。
「相手がああしてくれてるなら、こっちも全力でぶつけるしかねぇ!行くぞシェリー!」
「えぇ。攻撃しないことを後悔させてあげるわよ!」
カールとシェリーは目を閉じて集中し、全力で魔力を溜めていた。その間、天蠍宮は微動だにせず、ずっと攻撃が来るのを待っていた。
「龍属性魔法奥義『開闢』!!」
「最後の宝剣の儀『八尺瓊勾玉』!!」
『来なさい。さぁ、何度でも』
天蠍宮は2人分の必殺技を真正面から受けきり、傷一つついていなかった。いや、正確にはシェリーの剣によって多少傷つけることは出来ていたが、すぐに紫色の魔力によって修復されていった。
「くっそ!これでもダメか」
「いったい……一体どうすれば……」
『さぁ考えなさい挑戦者よ。余はいつまでもまっておるぞ』
「ちぃっ!硬すぎる!」
「さすがに引くしか……」
『別に逃げても構わないよ。ただし、この世界は余が自由に操れるということを忘れてはならぬぞ』
「くっそがぁぁ!!」
カールとシェリーは天蠍宮と睨み合ったまま、必死に対抗策を考えていた。
時間だけが、無情にも過ぎていく。




