第3章 第23話 変わり果てた世界
「ねぇ莉音」
双児宮の門に入った三人は、目の前の異様な光景に圧倒されていた。
「ここ、どういう場所?」
「わからない。でも、これが普通じゃないっていうのはわかる」
「ところで敵はどこに……?」
暗い雲に覆われ、ジャングルのように木々が生い茂った場所の真ん中で、三人は背中合わせに立っていた。
「わからない。でも、今動いた瞬間に一瞬で狩られる」
「とりあえず……結界魔法第24の門 霧輪廻」
「え?!苺さん、その魔法……!」
「説明は後。とりあえず、保険で張る」
苺が結界魔法を張ってすぐ、どこからともなく槍での魔法攻撃が飛んできた。狙いはヤウィー。
「ええ……?」
『あ~あ。仕留め損ねちゃった』
「やっとおでましって感じね。久しぶり。覚えてないかもしれないけど」
『さぁ?僕たちが興味あるのはそこの女だけ』
『そうよ。他のどこかの馬の骨たちは退出願える?』
結界魔法と相殺して槍が消えた直後、どこからか二つの声が聞こえてきた。その声は直接頭の中に響いているかのように全方向から聞こえていた。
「苺ちゃん、ヤウィーを守ることに専念して」
「……わかった」
「え?どうい……ってうわっ!」
『逃がさないよ~!』
「第3魔剣 雷電煉獄!」
ヤウィーを連れて逃げる苺の背後のなにもない空間を莉音が攻撃する。
『うわ!危ないな~』
『ちょっと私たちの邪魔をしないでくれる?』
「あなたたちの相手は私。私に背中向けて追うなら容赦なく貫くから」
『くっ……』
『あなた、その選択後悔させてあげる!』
「かかっておいで。第5魔剣 終焉崩壊」
莉音は右手に第5魔剣、左手に第3魔剣を出現させた。そして、姿を現した人間の子供の形をした2体もの敵と対峙した。
「解放!さぁ、行くよ!」
髪の毛が一瞬にして水色に変わる。
「魔力開伝!」
左目が水色から金色に変わる。不完全ながらも、魔剣と対になる魔力開伝という能力は莉音の最終奥義の1つだった。
魔力開伝は妖精魔法の秘伝の1つで、その詳細や代償等は一切わかっていない。
『妖精魔法?そんなもの使っても僕たちには勝てないよ!』
『私たち二人の力を甘く見ないでよね』
やけに攻撃的な莉音の態度に嫌気がさしたのか、それとも早く逃げている二人に追いつきたいのか、莉音に向かって魔法を打つ準備を始めた。
「無駄」
『え?』
双児宮が魔力を溜めた一瞬、莉音の魔剣が同時に2体を狙う。片本の剣が相手を完全に貫き、もう片方の剣はかすかに脇腹を引き裂いただけに終わった。
「まずは一人」
『くそがぁ!!』
「でも君も。どかん」
『え……』
左側にいた男の子の形をした敵の脇腹で何かが爆発した。開始数秒で終わった。
「こんなも……」
だが、莉音は不思議な違和感を感じていた。明らかに弱い双児宮、完全に変わり果てた世界と本来なら存在しないはずの紫色の魔力。そして、なぜか狙われたヤウィー。
「まさか……!」
気付いたときには莉音は走り出していた。




