第3章 第17話 弱音
生徒会室に入って、莉音は少し学園戦争のことを思い出していた。元々の始まりは、この部屋だった。
「そう言えば、みんなにちゃんとしたこと一回も話してなかったっけ。でも、今はまだ……」
龍護にはもう自分のチームに戻ってもらっていた。必要以上に接点を持たないためっていうのはあるが、莉音は龍護に自分が弱音を吐いている姿を見られたくなかった。
「はぁ……なんでこのタイミングであんな夢見たんだろう。もう過去のことは忘れようって決めてたのに」
莉音は汗ばんだ気持ち悪さも忘れて、近くにあった椅子に座り込んだ。
「やっぱり、これも私への試練なのかもしれない。自分の弱さを克服するために、神からもたらされた試練……」
莉音の頭の中は負の思考にあふれていた。考えれば考えるほど悪い考えだけが頭の中に居座る。
「だめだな……もっと強くならない、と?」
莉音は、生徒会室の入口付近に誰かの気配を感じた。
「あれ?誰かいるの?」
「え?その声は……心?」
「あ、莉音!も~、昨日はどこにいたの?」
「あはは。ちょっと図書室で調べ物をね」
心は生徒会室に入るなり、莉音の隣に座った。莉音は精一杯自然な作り笑いをして、心と話した。
「そっか~。それにしてもさ、何かあった?」
「え?何もないよ」
「……嘘だね」
心は莉音の言葉を一瞬で切り捨てていく。
「その顔は何かを抱え込もうとしてる顔。別に誰にも言わないから、私に言ってみ。言えないようなことだとしても、私の膝に頭預けていいからさ」
「え……でも、私……」
「大丈夫だよ。ここには私たちしかいないから、さ」
「で、でも……」
おびえた子鹿のような感じの莉音に、心は優しく話しかける。今の莉音はいつもと比べなくても異常だった。
「泣いても、いいんだよ」
「……え?」
「無理しなくてもいいんだよ。それに、莉音は抱え込み過ぎなの。もう少し周りを頼っちゃいなよ」
「!?……それって」
「ほら、そんなに怖がらなくてもいいんだよ。さ、おいで」
「……うん」
莉音は、ゆっくりと心の太ももに頭を寄せていく。ゆっくりと、ゆっくりと。
「うん。それでいいよ」
莉音の頭が完全に心の太ももに乗って少ししてから、心は莉音の頭を優しく撫でた。最初はビクッとしたが、それからは完全に見た目相応の女の子みたいだった。
「ねぇ、心……あのね」
「どうしたの?」
「私ね……本当は、この戦いが終わったら……みんなと一緒に遊びたい……昔みたいに」
「うん。そうだね。私も、また遊びたいよ」
「でも……私、私ね……」
莉音はすすり泣くような感じで、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「多分……もう一年、保たないかもしれない……」




