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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第3章 神獣大戦
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第3章 第14話 空白

 空白の2年間。それは莉音が知らない、終末戦争後の世界。

 終末戦争に関する報道は、大部分が死傷者、戦場となった都市の壊滅的状況、アジアが欧州に勝ったという歴史的快挙が占め、終戦に導いた者の名前は一切語られることは無かった。

「勝った」アジア連合と、「負けた」欧州連合。報道は、この部分だけを情報として世界に発信していた。

 だが、世界にはとある「一人の少女」に命を救われた者が大勢いた。


「その少女にお礼がしたい」

「彼女に会いたい」

「どうか彼女を英雄に」


 アジア各地でそのような声があがった。

 その反面、欧州連合側は「赤き青薔薇」と呼び、彼女は殺戮の限りを尽くした悪魔だ。と報道に付け足し、欧州で国際指名手配犯として5億ドルの賞金をかけた。

 アジア連合側は、彼女をひた隠しにするように情報を操っていた。しかし、それでも収まることはなく、むしろ国際連合への不信感まで募り始めた。

 さすがにここまで行って放置しておくわけにもいかず、アジア連合は


「彼女は死んだ。我々に勝利をもたらして戦死した彼女を英雄とする」


 とし、この騒動は終わりを迎えた。

 その後、日本は「英雄を産んだ国」として世界的に注目を浴び、魔力所有者専門学園を国際連合の指示で建設することとなった。その理事を任されたのが、戦争中は敵国側についていた「白夜」と呼ばれる秘密グループである。

 白夜は、日本人の少女と少年を1人ずつ派遣した。少女の名を玲奈、もう1人の名を将と言った。

 2人は、学園に派遣されてものの数ヶ月で学園の仕組みを完成させ、次の年には大勢の入学者が学園へと入った。





 ・・・




 神獣についての文献を探していた龍護は、「戦後録」と書かれた本を見つけ、適当なページを開けて読んでいた。


「へ〜、こんなんあったのか。ってかこれ、誰が書いたやつだ?」


 やたら国家に直接的な文章に興味が湧き、表紙には書いて無かった著者名を探し始めた。


「お、あったあった。え〜っと……神楽宮(かぐらみや) 莉緒(りお)?なんかどっかで聞いたことあるような……う〜ん」

「あれ?龍護じゃない、何か探し物?」

「お、心ちょうどいい所に。あのさ、神楽宮 莉緒ってどっかで見たことあるんだけど、分かるか?」

「神楽宮 莉緒?魔剣使いに愚問ね」

「そ、そこまで言うか」

「まぁ、普通は読まないか。世界神剣録の著者。で、その人がどうかしたの?」

「あ、そうかなるほど。実はさ──」


 龍護は「戦後録」を見せ、たまたま開いて読んだページのことを話した。心はどこか引っ掛かりを感じつつも、「やっぱり世界神剣録の作者ね」と苦笑した。


「とりあえず、今日はもう遅いから休んだら?莉音に怒られるわよ」

「あぁ。そっちもな。そんで──」

「その後は言わなくても大丈夫」

「そうかよ。じゃあまた」

「うん。また」


 心が図書室から出て行くと共に、静寂が図書室を支配する。龍護は「戦後録」を棚に戻し、一言こぼした。


「あいつ、なんで『赤き』なんだ?」







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