第3章 第13話 準備【チーム:クロノア団】
「それにしても、莉音はどうしてこんなチーム編成を……」
作戦会議中に、なにか引っかかることがあるかのようにカールがポツリとこぼした。
チーム変隊改めチームクロノア団の3人は、1番遅くまで生徒会室に残って作戦を練っていた。いつもなら莉音を中心にすぐに決まっていくのだが、今回はその肝心な莉音がいないため、全てが難航していた。
「さぁな〜。でも、俺は1番いい形で分けられてると思う。少なくとも、俺たちはどこか莉音に頼りきっていた節がある」
「そうね。でも、こうやって部隊編成したってことは、莉音は私達を信じてくれてるってことだと思うの」
「そうか……なぁ、2人はクロノア団結成した時のこと覚えてるか?全員で莉音と本気の手合わせした時のこと」
メモをする手を止め、2人がカールの方を見た。カールは真剣な眼差しで、2人からの答えを待っているようだった。
「う〜ん……俺は覚えてねぇな。結成した瞬間のことは覚えてるが、そのあとの記憶はあまりにも断片的だ」
「私も覚えてないわね。それにしても、どうして急にそんなこと聞くの?」
「いや、まぁたいしたことでもねぇんだけどさ。俺は2人に比べると少し後から入ったからかもしれないが、今でもはっきりと思い出すんだよな……莉音に手も足も出なかった、あの日のことを」
龍護もシェリーも、何も言えなかった。確かに、クロノア団結成時にカールはいなかった。でも、その数ヵ月後には参加していたから、2人ともほとんど誤差だと考えていた。
「確かに気にしすぎかもしれねぇ。でもな、いつもいつも敵が莉音の下位互換なんだよ。だから、いつもあの日が頭をよぎる」
カールの悔しさが全身から、言葉から、雰囲気から伝わってくる。
「……1人より2人、2人より3人、3人より4人。共に進む仲間がいるからこそ、未来を照らす光になる」
悔しさで震えるカールの肩をポンと叩いて、龍護は言った。
「これはな、莉音がクロノア団結成した時に言った言葉だ。3人より4人……あの時は、なんで4人?って思ったが、今ならお前だってわかる」
「……そう、だったのか」
「不思議なもんさ。でも、莉音はずっと俺たちのことを信じてる。最初から何も変わらず、ずっとな」
「ふふっ、そうね」
さっきまで深刻な顔をしていたカールは、自分が少し馬鹿らしくなってきて笑っていた。その時、生徒会室の扉をノックする音が聞こえた。
「あれ?なんか電気ついてるな〜と思ったら、まだ話してたの?」
「あれ?莉音じゃねぇか。てかまぁ、もうちょっとで終わるんだけどな」
「そう?でも程々にね〜。3人とも疲れてると思うから」
「おうよ。あ、そうだ莉音」
「ん?どうしたの?」
「勝とうな。絶対」
龍護は、生徒会室を出ていこうとした莉音を呼び止め、そう言った。莉音は振り返り、笑って返した。
「当たり前じゃん」




