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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第2章 白夜学園その②
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第2章 第98話 終戦

 「魔」を冠する剣は、各々が何かを司っているとされている。第二魔剣は「光」、第三魔剣は「雷」のように。それは魔星剣も例外ではなく、今莉音と戦っている魔星剣は「執着」を司っている。


「そろそろ限界?」

「……マ…………ダ」

「そう。あなたは相変わらずね。私に勝つことに『執着』して。かわいそうな子」


 戦場ではもう既に戦いが終わっていた。かろうじて地に落ちることを耐えてはいるものの、魔力で形を留めることが困難になっている魔星剣と、その首筋に剣を突き立てるようにして立っている莉音。風にたなびく水色の髪の毛は、莉音の神々しさをより一層際立たせていた。


「……ヒトツ…………イイカ?」

「いいけどどうしたの?命でも惜しくなった?」

「イヤ…………オマエ……カミ、ナノカ?」

「違うよ。私はどこにでもいる1人の少女。神様なんてなれないよ。この剣は、私の師匠から貰っただけ」

「……ソウ……カ」


 魔星剣はどこか満足そうに言った。人間の形を留めることができなくなり、魔力となって霧散しようとしていた時、これまでとは違うハッキリとした声が莉音の耳に届いた。


「君はいずれ神になる……その時は君が望む望まないに関わらず必ず来る。その時、君はどうするんだい?」

「……優しいんだね」

「ただの忠告さ。仮にも主を振るいし者だからな」

「そっか」


 黒い魔力が浄化され、天に昇っていく。二人がいる場所を中心に、空をおおっていた雲が消えていく。


「最後にもう1つ、聞いてもいいか?」

「いいよ」

「どうして2年もの間、世界から干渉できない場所に引きこもっていた?その2年が無ければ、世界征服だって可能だったはずだ。私の力もここまで蓄えられていなかった。私が送った1人目の刺客とあそこまでギリギリの戦いをしなくても良かったはずだ」

「確かに、あの頃の私は世界最強として君臨してたと思う。でも、私はただ平和が欲しかっただけ。終末戦争を終わらせようとしたのも、師匠からこの剣を貰ったのも、全ては平和が欲しかったから」

「だから2年も?」

「そう。私は待ってたの。世界から争いが消えることを。でも、消えなかった。それどころか、この国は私を売った。英雄にされてたことは知ってた。けど、死者扱いされてるなんて思わなかった」


 少女は語る。目の前の剣に語りかけるかのように。


「私が思っていた以上に、この世界は腐ってたみたい」

「これから君はどうするつもりなんだい?」

「終わらせる。昔から続いている争いの連鎖を。次の戦いで、全ての因果を絶つ」


 とても強く、そして激しくて静かな言葉だった。目の前に剣が一振、地面に寝てるだけとなった時、空から語りかけられるかのような声が莉音の耳に響いた。


「その意志がいずれ成されんことを」

「えぇ。いつかまた会いましょう、皆崎獅童」


 莉音は天を見、剣を収めながら呟いた。いずれまた、本当の意味で出会える日を信じて。


「りおーん!!かっごよがっだよぉぉぉ!!」

「うわっ!ちょっと心??!どうしたの急に」

「どうしたもこうしたもないよぉぉ!」

「あはは。気持ちはわかるけど、莉音が困ってるよ」

「むぅ……私も、このまま全力で飛びつきたい」

「苺もちょっと待ってやれ?今あそこに飛びつきに行くのはある意味莉音の地獄を生むからよ」

「ねぇ龍護?!みんな!?そんな遠くから眺めてないで助けてぇぇ!!」


 今までの緊迫した世界が嘘であったかのように、その場所には賑やかな笑い声と悲鳴が響いていた。


「むふふ〜。もう離さないよ〜!」

「もう……心は甘えんぼだね」

「むぅ、バカにして〜!でも今は許す!」


 より一層笑い声がこだました。たとえ一瞬だったとしても、この平和な世界が1番輝いているようだった。


「よぉし!今日は盛大にパーティーと行こうじゃないか!!!」

「「おおおおお!!!!」」


 今確かに、学園戦争は幕を閉じたのであった。








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