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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第2章 白夜学園その②
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第2章 第96話 残り1分30秒

 3つの「魔」を冠する剣が激突する。その度に空間が歪み、世界から色と空気が消える。


「心!」

「あいよぉ!」


 一瞬の油断が生死を分けるその戦いは、数的不利を覆すかのような魔星剣の力によって互角になっていた。いや、正確には莉音と心が徐々に押され始めていた。


「ホロボス……スベテホロボシテムニ!」

「くっ……心!」

「やらせるかぁ!」

「ムダダニンゲン……オトナシクチレ」

「これはさすがに……魔剣特殊魔法三之型(オーバーブースト)!」

「キカヌ!」


 戦闘時間が長くなればなるほど、莉音と心は不利になっていく。ほとんど無限の魔力を備えた魔星剣を相手に持久戦は自殺行為でしかなかった。


「ねぇ莉音!こんなのどうすればいいの?!」

「わかんない……さすがにここまでとは思ってなかった」

「じゃあ……負け?ここに来て……ここまで、みんなで繋いできたのに……」


 2人は、一旦魔星剣から距離を取った。その刹那の時間で、莉音は1つ、大きな覚悟を決めた。


「大丈夫。そのために私がいる」

「でもさっき、あいつをどうすればいいかわかんないって!」

「……2分」

「え?」

「今すぐは無理。だから2分、私に時間を頂戴」


 莉音は、心を真っ直ぐ見据えて言った。莉音自身、この選択が本当に正しいのか分からなかった。


「……そっか。本当に2分でいいんだね?」

「うん。ごめんね、かなり重いの背負わせちゃって」

「何言ってんのさ。本当に重たいもん背負ってるのは莉音でしょ」

「ハナシハ……オワリカ?」

「あぁ。待たせちまって悪ぃな」

「……ショセンミライハカワラン……オマエラガマケルミライハナ」


 その言葉とともに魔星剣は一気に距離を詰めた。一気に決着をつけようとしているのだ。


「未来なんてわからない。わからないからこそ……人は!今を必死に生きてるんだ!!」

「……ムゴイナ」

「人はお前とは違う!私達には、未来を作る力が!希望が!勇気が!確かにここにあるんだ!!」


 鍔迫り合いで弾かれた後、迎撃体勢を整えながら心は自分の胸に手を当てながら叫んだ。


「だから負けない!人間は、力なんかに屈しない!」


 白い光が心を包む。まるで太陽のような輝きは、吸い寄せられるかのように心が持つ魔剣を包み込んだ。


「これが私の……私たちの希望だ!輝け!『太陽神剣 天巫女(プロミネンスゲート)』!!」

「ソウカ……ソレガ、ヒトカ」

「行くぞ魔星剣!」


 心は1人で魔星剣の注意を完全に引き受けていた。その時莉音は地面に剣を刺し、その剣に(ひざまず)いていた。


「ねぇ『(イクリプス)』……もう一度、私に力を貸して……」


 もう1つの戦いが、今始まろうとしていた。



 約束した2分まで、残り1分30秒








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