第2章 第90話 来たるべく最後の戦いへ
「それにしても、莉音本当にありがとう!」
「いやいや、私の方こそ結構休ませてもらえたよ。みんなには感謝しなきゃいけないな〜」
龍護とカールが話している一方、三人の少女と一人の少年が楽しげに話していた。あれ?一人の少年?
「ん?ってうわ!将いつからそこに!?」
「そんなに驚くことないだろう」
「なんでこっちに来てるの!?あっちで男子だけで話してくればいいじゃん!」
「最初はそうしようと思ったんだがな。流石にあそこに俺が行くのは筋違いな気がしたからこっちに来た」
一切動じずに淡々と言うその姿は、どこか引っかかるものがあるようだった。
「それにしても、二人は宝剣使いだったんだね。びっくりしたよ」
「まあな。といってもそんなに使う機会はないけどな」
「そうなの。だから久しぶりに使えるって思ってちょっと張り切っちゃった!」
「また今度手合わせしてみたいな〜。二人とも強いし、楽しい戦いになりそうだし」
「いやいや、流石に俺たちじゃ莉音の足元にも及ばないさ」
「そんなことないよ。君たちの方が充分強いし」
「いやいや、クロノア団最強の莉音には勝てないって」
「え?私じゃないよ、クロノア団の最強」
莉音は玲奈の言葉に少し複雑な顔でそう答えた。その表情は、その場にいる誰もが見たことがないものだった。
「いろんな人に言われるんだよね。クロノア団最強は私だって。でも、本当は違うよ」
風が地面の砂を巻き上げるような音が聞こえた。
「私が唯一、死んだって思った戦いがあるの。それは……クロノア団結成から数年後にした軽い模擬戦の時だったんだけど、私は負けたの。龍護に。偶然だと思う?全然。開始17分、私の首筋に龍護の鎌が迫ってた。あの時の龍護は本当に強かった。メーズと同じくらいか、それ以上に」
「じゃあ、どうして龍護は……」
「弱くなったのか。って聞きたい?」
心が言い切る前に莉音が言った。
「弱くなってないよ。自分を見失ってるだけ。カールからも何か言ってくれてるみたいだし、もうそろそろ大丈夫になると思う」
「そっか……信じてるんだな、龍護のこと。いや、仲間のことをって言う方が正しいか」
「お?将わかってるじゃん。正直、私もブランクを感じてるんだよね。まだ全盛期に遠く及ばない。少しずつ力は戻ってきてるけど、まだまだ」
それぞれの場所で同じような話をしながら、来たるべく最後の戦いを待っていた。もう一度龍護が昔の輝きを取り戻せることを、全員が願いながら。




