第2章 第83話 参戦!
戦況はお世辞にも互角とは言えなかった。相手に対抗できていたのは事実上心だけで、龍護とカールは明らかに足でまといだった。
「おらおらどうしたぁ!?動きにキレがねぇなぁ!」
「そっちこそ、もうそろそろ疲れてきたんじゃない?」
「舐めてもらっちゃ困るぜ!行くぞ閃冥門!!」
「こっちこそ!我が命に応えよ、雷電煉獄!」
2つの魔剣が交錯する。果てしない虚空だけだそこに生まれていた。
「くそ。俺はなんでこんなに弱いんだよ!」
その光景をただ見てることしか出来なかった龍護は、自分の弱さに嫌気がさしていた。
「大丈夫……大丈夫だ。俺にはまだ……」
龍護はずっと願っていた。ダンジョンでの奇跡を。それさえ使えれば心や、紛いなりにも攻防に参加出来ているカールと共に戦えると。
なのに、その思いが強くなればなるほど動きが緩慢になり、いつもの力の半分も出せなくて戦線離脱せざるを得なくなった。
「おらぁ!」
「くっ……舐めるなぁ!龍属性魔法『霞』!!」
「『魔力連結』!からの雷電龍属性剣特殊剣技『滅殺』!!」
「いい連携じゃねぇか!そう来なくっちゃなぁ!!」
龍護の目の前で、2人の仲間が死力を尽くして敵に立ち向かっている。龍護も混ざろうとするが、二人がかりでやっと互角レベルの相手に畏怖してしまって足が動かない。
「俺は……俺は……俺はァ!」
「君の敵は自分だよ」
「……え?」
目の前で心とカールが薙ぎ払われ、絶体絶命と思われたその時、どこからかそんな声が聞こえた。
「やぁみんな!待たせたね」
「なんだなんだ?増援か?随分お……」
「君かい?私の仲間に手を出したのは」
1人の少女が、相手が無駄口を叩いている時に一瞬で距離を詰めて首を狙った。
「うお!?危ねぇな!」
「ここは戦場だよ。アーユーオケ?」
「いい性格してるぜあんた!」
ジョンダーは剣をギリギリのところで躱し、距離を取った。1人の少女と、少し遅れてきた1人の少年の背中は、世界で1番心強かった。
「みんな、おまたせ」
「もう……遅いよ玲奈、将!」
戦場の風向きは、今変わった。
 




