第2章 第82話 閃冥門
「なぁ心」
「ん?どうしたの?」
眠っている莉音、苺、シェリーを囲うように3人が構えていた時、龍護が何気なく心に聞いた。
「お前ら執行部?ってのは3人だけなのか?」
「ううん。あと2人居るよ。今はまだ来てないけどね」
「ほう?ってことはあとから来るってことか?」
「うん。確証はないけどね」
「なんだよそれ」
「おいおい、お前ら2人なに面白そうな話してるんだ?」
「カールには関係無いよ〜」
「俺だけ仲間外れはさすがに酷くないか!?」
笑い声だけが空間にこだまする中、3人はまるで旧友であるかのように話し始めた。まるで最後の刺客のことを忘れているかのように。
「それにしても、どうして出てこないのかな?」
が、心は相手の意表を突くタイミングで見えない敵に話しかけた。
「ちぃ、なんでバレちまうかな……もう少しで不意打ち成功だと思ってたのに」
「さぁ?あなたが魔剣使いだからじゃない?」
「ふっ……そういうことかよ。てことははなから不意打ちなんて無駄な考えだったってことか」
目の前の空間が崩れるかのように割れた。そしてそこから1人の男が出てきた。
「やっと姿を現したね」
「正確には現さざるを得なかったんだけどな。相変わらずよくわかんねぇなお前」
「そっちこそね。どういう風の吹き回し?」
「どうもこうもねぇ。お前には恨みはねぇが莉音には散々やられたからな。そのお返しというか雪辱戦をしに来たって感じだ」
「ん?あ、お前どっかで見たことあると思ったら『聖剣』ジョンダー・クリンソンか」
カールが男──ジョンダーを指さしてそう言った。そう、この男は終末戦争前のクロノア団と戦ったギルド「魔聖傭兵団」のリーダーで、当時10歳だった莉音に完膚無きまでやられていた。
「あのころの俺とは違う。俺は変わったんだよ。こいつを手に入れてな!」
ジョンダーは1本の剣を鞘から抜いた。それは妖しく煌めいた。まるで生きているかのように。
「そう……じゃあこっちも受けて立つよ。第3魔剣 雷電煉獄行くよ!」
「第8魔剣 閃冥門の力見せてやる!」
2人の声に合わせるようにカールと龍護も剣を構えた。そして、3対1の戦いが始まった。




