第2章 第69話 ひとつの歴史のプロローグ
「さぁ、お前はどうやって俺の魔神剣を攻略する?」
まるで世界中に響いているかのような声で男は言った。互いに剣を構えた直後、男は姿を消した。いなくなった訳ではなく、本当に消えているのだ。
「私も、私のやり方でやる……『霧の方舟』ノア=ミスト」
苺も剣を構えた。見えない剣を。
「ほう?4つの方舟が1本か。こりゃ手強そうだ」
「剣は実力の付属材料。そっちが来ないなら、こっちから行く」
苺は、微かに揺蕩う空間が男の居場所だと知っている。長い間魔神剣と繋がっていたというのもあるが、単純に経験値の中で見出した見えない相手を視る打開策。
「その感じ、俺の居場所が分かるのか……なら仕方ねぇか」
「……なんのつもり?」
「いやなぁに。戦闘に関してはこっちのがやりやすいんでね」
男は突然姿を現した。本来暗殺者である男は、基本的に暗殺の領域でしか戦わないが、相手が苺だからだろう。男が初めて戦闘の領域に立った。
「まぁ、これでも暗殺者となって名前を捨てるまでは普通の戦士だったんだよ。普通に戦うのは久しぶりだけどな」
「そう……じゃあ、始めよ」
「あぁ、いつでもいいぜ」
2人が剣を構えた。お互い話しつつも常に相手を狙っていた。いつでも奇襲できるように。
「行くよ……方舟特殊魔法剣術六の陣『時雨』」
「お前にこの剣の本当の力を見せてやる!漆黒の第5章『悪夢』!」
あくまでこれはひとつの歴史のプロローグに過ぎなかった。でも、その事を知っている者は、誰もいない。




