第2章 第67話 再会と再開
「おい!このままじゃらちがあかねぇぞ!」
男からの猛攻を凌ぎながらカールが叫んだ。ずっと莉音を狙っていた男は、戦いの途中で標的を変えていた。
「そうだね……苺!」
「了解。異空間結界魔法解放」
男が苺から1番遠い位置に移動した瞬間、心は苺に異空間結界魔法を使うように言った。理由として、少しずつだけど相手のペースで戦闘じゃない戦いを進められ始めたからだ。さすがにこのままでは押し切られる。
「ちぃ……逃げたか」
男は姿を晒して悪態をついた。あと一歩のところで閉じた異空間結界魔法の入口を見ながら、少し過去を思い出していた。
「それにしてもよぉ……」
『どうした?お前にしては珍しく感傷的じゃないか』
「いやな。見間違いだったらいいんだけどな……」
『結界魔法の娘か?』
「お前もか?」
『儂を舐めすぎだ。それに、お前も本当は確信しているんだろ』
男は何も答えなかった。否、答えられなかった。図星だったからだ。それに、心が叫んだ名前───
「なぁ、お前はあいつとの約束覚えてるか?」
『愚問を。殺したやつの名前は忘れない。だろ?』
「あぁ。それは俺なりの弔いなんだけどな……まさかこんな形でそのことを後悔するとは思わなかったぜ」
『そうだろうな。だから入らなかったのだろ?』
「お前、本当にそういうとこ鋭いよな……まぁ、そういう事だ。正直、これは今断ち切らなきゃならねぇ。俺の為にも───」
再び空間の扉が開く。僅かな休戦時間が終わりを告げ、殺し合いが再開する瞬間。その刹那に、知らず知らずの間に運命の悪戯にあった2人が言葉を交わした。
「とても今更だけど………久しぶり」
「あぁ。まさか生きてるとはな」
「色々あった。でも、こうして会えた。だからちゃんと、お礼が言える」
「じゃあ、俺からはおめでとうと初めましてを送ろうか。今からの戦いに捧げるために」
「うん。ありがとうは、その後に」
そして、2人は各々の過去に戦いを挑む。そして、男と苺はもう一度剣を交わらせた。




