100話到達記念番外編
「ねぇ皆聞いて!」
私は、いつもの如くどうでもいい話が玲奈から始まると思い、何となく本を読みながらいた。他の執行部メンバーも各々好きなことをしていて、玲奈の言葉に耳を貸す人はいない感じだった。
「私たちの物語、『青薔薇は再び咲き乱れる』が……なんと!!100話に到達したの!!!」
「「な、なんだってぇ!??!」」
私も含め、玲奈の言葉に全員が素っ頓狂な声を上げた。というか、なんで玲奈そんなこと知ってるの?もしかして裏世界と繋がってるの?
「というわけで……」
「わけで?」
「第1回!もしも違う結末だったらどうなっちゃうの!?選手け〜ん!!」
え?ちょっと待って何それ?もしも違う結末だったらどうなっちゃうの選手権?それなんの選手権なの!?
「ルールは簡単!誰が1番すごい結末を考えられるか!トップバッターは莉音!!」
「え?私?」
「そうそう。一番莉音が人生経験豊富そうだから」
いや……選び方に悪意あるでしょ。まぁ、いいけど……
「というか、今こうして玲奈と普通に話してること自体がありえない気が……」
「莉音……そこは気にしちゃダメ」
あ、そうなのね。まぁいいや。どうしようかな…………う〜ん、まぁ、無難に行こうかな。
「じゃあ始めるよ」
「お、どんな現実をねじ曲げてくれるのかな?」
「言い方が……まぁいっか。じゃあ、最初に現実を言うね」
少し悪意がありそうな言い方が気になったけど、まぁいっか。それじゃ始めようかな。
「えっとね、ねじ曲げるというより、これは私の希望……なんだけどね───」
・・・
私は、生まれて間もなく捨てられちゃったの。理由はわからないし、その事実が本当かどうかもわからないけど、でも私は森の中に捨てられて、師匠に拾われた……だから、私は自分が元からそこに住んでいたと思っていたし、師匠がお父さんだとも思ってた。
でも、なんか違うな……っていうのはあったの。私は師匠とは根本的に違うって感じたところが。
その時からかな。たまに夢を見るようになったの。その夢はとても幸せで、暖かかったんだ。
ごめんね、ちょっと話がそれちゃったね。今回話すのは、その夢のことなんだ。えっと……どこから話そうかな。まぁ、途中からっていうのもあれだから、最初から話すね。
「この子は莉音と名付けましょう」
一人の女性の言葉で目が覚めると、そこには初めて見るはずなのにどこか懐かしい顔があるの。多分、私のお母さん。その顔は幸せと希望に満ちていて、とても嬉しそう。
「あぁ。それがいい。俺も賛成だ。よろしくな!莉音」
「ふふふ。これから賑やかになるわね」
2人の夫婦は、一人の産まれたばかりの赤ん坊を眺めながら明るい未来に思いを馳せている。私はその間で、ただ泣いた。悲しいからじゃない。泣く以外に感情を表せないから……だから泣いた。
「ほぉらご飯でちゅよ〜」
それから時間は一気に加速するの。気づいたら私は歩いたり、ご飯を食べたりできるくらいになってた。まだ言葉を話すのは難しいけど、笑うこともできるようになった。多分、1歳ぐらいだと思う。
「あ、そう言えばもうすぐよね?」
「あぁ、そうだな。魔力検査……なぁ、○○○」
「なぁに?」
「もし仮に……仮にだぞ?莉音が魔力を持ってたらどうする?」
「どうって……言われても」
「まぁ、最悪の事態を今考えても仕方ない。持ってないに越したことはないんだから」
「それもそうね……ちょっと怖いわ……」
それからまもなくして、私は魔力検査を受けることになった。でもそこはあまり鮮明には見えてなくて、ただ分かったのは、騒然となった病院と、絶望に染まった両親の顔……言葉じゃ表せられないけど、多分、みんなが想像してる通り。
・・・
「私、ずっと思ってるの……これは本当は夢じゃなくて、捨てられる前の微かな記憶なんじゃないかって」
私は、流れ出そうになった涙を堪えながら、そう、言葉を繋げた。
「もし魔力検査で私が持ってないって判定されてたら、捨てられることなくずっと幸せの中に生きていられたのかな……本当のお父さんとお母さんと、笑いあって、泣きあって、喧嘩して……それでまた笑いあって……そんな日々に生きていられたのかな…………」
もう止められなかった。ずっと1人で抱えてきた「夢」は、今の私には尊すぎて耐えられない……
「ごめんね……いきなり変な話、しちゃって……」
「変じゃないよ!」
「え?」
ずっと静かに聞いていた心が声を上げた。その目には、確かに光るものがあった。
「その幸せを願うのは変なことなんかじゃない!その話をするのも変なことじゃない!だから……だからさ」
心は、私の頭を優しく撫でながら笑いかけてくれた。そこには、夢の中で感じた暖かさがあった。私は、そう感じた。
「その願いを大切にしてね。絶対に捨てちゃダメだよ」
「うん…ありがとう。少し、わだかまりが解けたよ」
「なら良かった」
あれ?なんでこんな話したんだっけ……まぁいっか。この場所が私の居場所…ずっと離したくない、私の大事な大事な宝物。
「あちゃ〜……こりゃもう完敗だね。皆もそう思うでしょ?」
「だな。さすがに莉音の話を超えるのは無理だ」
「うん。さすが莉音」
「と、いうわけで!終わろうか。さぁ、素晴らしい話も聞けたし、野郎ども!作業に戻れ〜!!」
「いや、始めたの玲奈でしょ」
「え〜?ワタシナンノコトカワカラナイナー」
「しらばくれるんじゃねぇ!」
生徒会室が徐々に笑い声で満たされていく。私の涙もいつの間にか止まっていて、笑っていた。そんな場所が、この生徒会室。
「最後に!今までありがとう!『青薔薇は再び咲き乱れる』をこれからもよろしく!!」
「あ!玲奈お前強引に終わらせにかかりやがったな!」
こんな時ですら何やかんやで騒がしくなる生徒会室だったとさ。
皆様、初めましての方は初めまして。そうじゃない方はどうも、九十九 疾風です。
まずは、100話到達致しました!ここまで続けられてるのは読者の皆様あってこそです。これからも、本作をよろしくお願いします!
次に、お詫び申し上げます。Twitterではご報告致しましたが、地域の祭事等の様々な事情により更新が途切れ途切れとなってしまいました。誠に申し訳ありません。
次に、Twitterにて様々な報告等を行う場合がございます。もし良ければ、
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長くなってしまいましたが、最後に、100話という大台に乗れたのは読者の皆様の力あってこそです。本当にありがとうございます!そして、これからも本作をよろしくお願いします!




