表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵は謎に溺れ  作者: 鈴木3号
3/3

職務

朝食をあらかた口に放り込んだ後、身支度を済ませ、男は黒い革張りのソファにどっかりと座り込んだ。ガラスのテーブルにおいてあるノートパソコンを開き、昨夜見たものと同じ写真を表示させる。


少女はそのおぞましい写真の映る画面を事も無げにのぞき込む。そして真剣な顔で何かを考え込み始めた。


男は問うた。

「やっぱり、これは…」

少女は言った。

「切り裂き、ジャック。」と。

切り裂きジャックと言えば、かの有名な連続殺人事件である。


1888年、ロンドンのイーストエンドで街娼五人が殺害された。被害者はメスのような鋭利な刃物で喉を掻き切られ、過度の遺体損壊を加えられた、残虐極まりない事件。 連続殺人の起源とも称されるこの事件だが、貧民街でまともな聞き込みができるはずもなく、決定的な犯人の見つからぬまま捜査打ち切りとなった。

その事件の名を聞いただけで察した男は、我が意を得たりとそれを肯定した。


「模倣犯だろうな。露骨すぎる位に一致してる。」


そう。その風化しつつある事件と、今回男が調査する事件はあまりにもあまりな位似ている。現代日本版切り裂きジャックとでも形容できよう。


「まず被害者だ。本物は娼婦、こいつは売春行為に手を染める学生にターゲットを絞ってる。今までに確認されたもので二人、後三人襲う予定があると見て間違いないだろう。」 情報の確認と整理、共有を男は淡々と続ける。「次に犯行日時。一件目八月三十一日。二件目九月八日。ロンドンの本物に倣えば次が九月三十日、犯行声明がその三日前だから、まだ時間的余裕はあるな。」


「でも…!」


我慢できないといった風に抗議した少女に、男は諭すように呟いた。


「分かってる。被害者の親にとっちゃ、娘が売春してた上に、それを殺されたときた。早く早くと解決を願って然るべきなんだよ。全く、胸糞悪いな…。」


場に重苦しい沈黙が立ちこめる。 少女も、やるせない表情で俯いていた。

昨日の晩に、問題の依頼が届いた。それ故にこの探偵事務所唯一の探偵であるこの男は朝から忙しく働いているのであるが、微かにどこか眠たげだ。

夜に殺人事件の話を聞かされて安眠できる人間など、まずいないだろうから当然だ。


この男にとっては特に。

更新しました。

次話からはもうちょっと文量増やします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ