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Short Story

カタスミ

作者: 土湖園あさ

――声が聞こえる…


――聞こえるんだ。


君の声が。


――君だけの声が。


何故君は…


「私は、天使だと思うの。」



【カタスミ】


扉を開けたトルトは空を見上げた。


透き通る空には小鳥達が朝を伝える為、忙しそうに飛んでいる。


「やっと起きたのね。」


目を覚ました僕は見知らぬ少女の存在に気付いた。


「君は誰?何処から入ってきたんだい?」


「何を言っているの?私はいつも“此処にいる”じゃない。」


見知らぬ少女は名前も言わず最後の問いにだけ答えた。



「君の姿は初めて見たよ。僕は一人で住んでいるんだ。」


トルトは一呼吸した後、再び口を開けた。


「女の子が一人で森に入ったら危ないよ。」


「“貴方がいるじゃない”」


そう言った少女は窓から身を乗り出して空を見上げた。


「そろそろ行かないと。明日も来るわね。」


すると少女は窓のカーテンに包まれ、溶けて無くなったかのように姿を消した…



少女は、次の日も、その次の日も姿を見せた。


しかし、とある日から此処一週間は姿を見せない。


(やっぱり夢だったのかな…)


考えていると一匹の小鳥が側に寄り添ってきた。


(あの少女の様に可愛らしいな…)


思い付いたかのようにトルトは勢いよく立ち上がり、外に出た。



今ならあの子に会える気がする。


景色を見渡しながら歩いていたが、次第にトルトは小走りになった。


「もっと君とお話をしたいんだ!」


誰もいない森に叫んだトルトはその場に立ちすくんだ。



ピー ピー


すると、小鳥の鳴き声と共に、見覚えのある少女が現れた。


「私を呼ん…」


トルトは少女の言葉を最後まで聞かずにぎゅっと抱きしめた。


「会いたかった…」


「え?私は毎日トルトの家に行っているわよ。」


トルトは唖然とした。


「君が僕の家に…?来ていたの?」


「そうよ、気付かなかった?嗚呼、私が見えていなかったのね。」


少女はトルトの後ろ側に回り、囁いた。



『だって私は天使なのだもの。』


何がなんだかさっぱり分からない。分かったことは少女が“天使”だということだ。


「君の言ってることは本当なのかい?」


「もし本当だとしたら貴方は逃げてしまう?」


「いいや、逃げたりしないよ。君の側にいる。」


「嬉しい。でもね…私もうすぐ人間の姿になれなくなるの。ずっと天使のまま。貴方には見えない…」


「そうなのか…悲しいけど受け入れるよ…ねえ、一つ聞きたいことがあるんだけれど良いかな?」


「うん。」


「ありがとう。君の名前を教えてほしいんだ。」


「私の名前は…」


言いかけたその時、少女の体が次第に消え始めた。



「もうこの姿では居られないみたい…私の名前は“リル”よ…」


リルが名前を言った瞬間、小鳥達が羽ばたきトルトが瞬きをすると、もうリルの姿は消えていた。


そして、一枚の羽がトルトの背中にそっと落ちた…


「君は本当に天使なの?」


空に舞う小鳥の羽…



――元気にしてるかな?


羽の首飾りを付けている一人の少年。


そこに一羽の小鳥が肩に。


――私は元気よ


そっと優しく包み込んだ。



END カタスミ



読んでくださり有難うございました!


今回の作品は、恋愛要素を少し多めに入れてみました。


心がポカポカする…そんな作品を書いていきたいです*

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