会社へ行く
「お腹痛い……」
目が覚めると同時にお腹の痛さに見舞われた。
むしろお腹の痛さで起きたのかもしれない。
時計を見ると6時15分を指している。
いつもより15分早いけど二度寝する余裕はない。
なんだか損した気分になりながら顔を洗う。
バシャバシャと顔に水をかけると目が覚めてくる。
今日は朝一で会議だ。
「準備しなきゃ…」
正直めんどくさい。
ただでさえお腹痛いのになんで外に出なきゃならないの。
憂鬱で仕方ない。
会議の資料は金曜の時点で出来上がっているしパワーポイントも問題ない。
が。
人前で話すことはあまり得意ではない。
というか、正直苦手だ。
悪意が有ろうと無かろうと衆目に晒されることは私にとっては耐え難い。
鬱々とした気分になりながら洗顔を終え、化粧をする。
いつもよりキツめに引いたアイラインは会議に勝つぞという気合の現れだ。
電車はいつだって人々の思いを乗せているのだと私は思う。
平日の朝の剣呑とした雰囲気はやはりそれぞれ行かねばならない場所への思いが生み出している。
楽しそうにしているのは数人グループの高校生くらいなもので彼らだって心から楽しい気持ちで電車に乗っているのかと聞かれればノーと答えるだろう。
"今日は朝から会議だ(><)緊張するけど頑張るぞ꒰。•`ェ´•。꒱۶"
送信。
青と白で統一された画面には憂鬱そうな(今日もだるくて仕事に行きたくないだの上司がくそすぎてやる気も失せるだのといった)呟きが溢れている。
私だけが、いつも楽しく前向きな呟きを繰り返しているのが妙に薄寒かった。
乗り換え駅につきコンビニで水を買う。
ほんとは甘いミルクティーとか炭酸の効いたジュースの方が好きなんだよぁと思った。
ホームに滑り込んできた電車と席取り戦争にいきり立つ企業戦士を眺めながら今日の会議どうしよ…とまた少し憂鬱になった。