行く末に
序章 ゆく末に
あの日々に帰りたかった。
また会いたかった。
もうその手で抱き締めて欲しかった。
ーーだから私はそこへ堕ちた。そう、これは彼女の人生の物語。
破局。
他所で起こった戦争によって人生の歯車はバランスを失った。それも唐突に。
私はお兄ちゃんが好きだった。この上なく。
私はお兄ちゃんを愛していた。物心の付いた頃から。
これは禁じられた恋なのだと知り、自分の中で否定していた。
なのに本心は逆らえなかった。
そもそも私がお兄ちゃんを好きになってはいけない理由がどこにあるの?
私の瞳に映っているのはお兄ちゃんだけ。他の人なんてどうだっていい。私たちの事を邪魔するなら死んじゃえばいい。誰にも私たちを引き裂く権利は無い。そんな事をしていいはずないから。
私はお兄ちゃんと一緒にいたい。それは最期であっても。
私はそれ以外望んでいないのに、それだけしか願っていないのに……どうして、どうして私とお兄ちゃんを引き裂くの?
ある日、お兄ちゃんが遠いところへ連れていかれてしまった。 私はそこに取り残されたまま。
私はどうすればいいの? 追いかけるのか、諦めるのか。取り戻しに行くのか。
私は考えた。
お兄ちゃんとの幸せを願ってーーだけど。
……その答えは私にさえも分からない。