ノート
何もない空に、描いていく。
それは、左目で見える、白紙に載る。
遠く、遠く、響くように。
一際、高い音が、空へと昇っていく。
伸びて、伸びて、青空の向こうへ。
震える空は、雲の隙間から、罫線を書いた布を垂らしてきた。
引き出される、音符。
書き込まれる、視線。
障子と、襖の向こう。
ガラスを震わせて、入って。
ようやく、僕のもとへ。
もやもや、漂ってきたものが、ようやっと、形を成して。
見えたと思ったら。
もうすでに、消え去っていった。
今度こそは、書き留めないと。
もう、ノートの空きページは、残っていない。
消しゴムで消すには、この左目は、物覚えが良かった。
風の音は、バイクの音は。
夜間の音は。
何色だったかな。
覚えすぎて、忘れてしまった。




