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同居人達の騒がしすぎる日常2  作者: 66お兄さん
2/3

最低で最高の日

同居人BLラブストーリー今度はテスト返し!

雅希はなぜか散々な目に合い続け、なぜか同居人達もこそこそしてる?先に帰っちゃうしなんだなんだよ!


こちらの作品はpixivにも掲載されています。

「お前ら席につけー」


担任の言葉でクラスの皆が席に着く。いつもの事だが、今日はなんだかざわついているように感じる。


「テスト返し…こわい…」


机に突っ伏している田中伶織たなか れおが今にも消えそうな声で呟いた。

そう、今日は先日行われた期末テストのテスト返しの日。一日をかけて各教科ごとの先生がクラスを周り、ひたすらテストを返されるという地獄の日である。とはいえ、テストを返されている時以外は何をするのも自由で、ゲームなんかをしていても何も言われない上に午前授業なので俺、重田雅希しげた まさきとしては楽な日である。懸念事項があるとすれば、同居人達に徹夜で勉強を教えていたので、皆の結果がどうなるかという所だ。

号令の掛け声で朝の挨拶をし、一日が始まる。

ーーーーーー


「ま、まさ…オレ初めて科学で50点越えた…!」


「ほんとか⁉︎やったじゃんか!」


バチーンっとハイタッチをしてくるのは金田榛樹かねだ はるき。運動神経は良いのに、頭は残念。一応紆余曲折あって俺と榛樹は恋人同士…だったりもする。いつも赤点連発だったが前日に要点を叩き込んだかいがあったようだ。


「早川。ん?居ないのか、早川ー」


「あっこらはな!呼ばれてるぞ、寝るなって。」


「んー…おはようまさちゃん」


この常に半分は寝てるのは、早川花之介はやかわ はなのすけ。放っておくとすぐ寝るやつだ。


「はなは科学どうだった?」


「えっとね…86点」


「はな点数たっか!!」


榛樹が叫び、また寝ようとしている花之介の頬を引っ張っている。そう、なぜかこいつは授業中も居眠りばっかりなのに頭が良い。それに器用で、料理もやろうとすれば出来るし折り紙なんかも得意だ。俺からすると羨ましい限りです、はい。


「まさちゃーん!ぼくのも見てー!」


「うわっれおいきなり抱きつくなって!」


抱きついて嬉しそうにテストの点数を見せてくるのは田中伶織たなか れお。男なのに顔はいわゆる可愛い系で、小動物を連想させるが…如何せん大食いだ。


「初めて50点以上取った!褒めて褒めてっ」


そして、榛樹と同じぐらいのおばかだ。二人ともやれば出来るのだが、どうも肝心のやる気を中々出してくれない。勉強させようとするとゲームをしだしたりアニメを見だしたり…テスト前日は修羅場だった。


「重田ー」


「あ、はい」


俺の名前が呼ばれ、テストを受け取ると先生方は決まって俺を微妙な笑顔で見る。これはどの教科でも同じで、その理由は…。


「どうだった?雅希君」


「あ、神崎。96点だよ。お前は…どうせ100点なんでしょうねー学年トップ様はー」


俺がジト目で言うと、目の前のどこの王子様だって感じの爽やかイケメンお坊ちゃまの神崎彰かんざき あきらは爽やかさMAXで苦笑する。俺が微妙な顔をされる理由はこいつにある。

この爽やかイケメンは、見てくれがすこぶる良いのにその上学業優秀スポーツ万能。おまけに性格も良くて男女関係無く皆に好かれる人気者。父親が学園長で、家は大金持ちの大豪邸に住んでいる。どこの出来過ぎ君だよって言いたくなるこいつは、1年の時から同じクラスで、そしてなぜかずっと席が前後。なのでテスト返しも前後で行われるわけだが…神崎はいつもほぼ100点で、そのすぐ後に返される俺がいくら良い点数を取っても先生方は微妙な反応しか出来なくなる。そして、決まってこう言うのだ。『重田も頑張ったんだけどね』、と。


「雅希君にはすぐ追い抜かれそうだよ。次のクラス1位は雅希くんじゃないかな」


「よく言うよ、いっつも100点ばっかり取りやがって。クラス1位め」


そう言いながら神崎にヘッドロックを仕掛けてやる。彼は笑いながら俺の腕を軽く叩いてギブ、ギブと言ってくるが離してやらない。

俺はクラス2位で、こいつは1位。いつもどの教科でも2位。たまに100点取れて1位になれても、それは同立1位。そりゃ悔しく無いわけじゃ無いが、俺は神崎が嫌いじゃ無い。むしろ、良いやつだし好感を持っている。

さあ次は卍固めでもしてやろうか、と思っていると後ろから榛樹にぐいっと引っ張られる。


「は、はる?」


「まさ、こっち」


神崎から手が離れ、花之介や伶織がいる方へ引きずられていく。


「金田君も今回は点数良かったみたいだね。」


「別に。あんたにしたら低いだろうよ。」


にこにことして言う神崎の言葉に不機嫌そうに答える榛樹。


(え、え?何この不穏な空気)


つい二人の顔を交互に見てしまう。なぜだか1年の時から榛樹は神崎を一方的に嫌っている節がある。理由は分からないが、俺としては…仲良くして欲しいのに。

神崎を睨みつけている榛樹に何か言おうと口を開きかけるが、それはチャイムの音に遮られてしまった。

そのまま榛樹に引きずられていく俺を、神崎が意味ありげな微笑みで見ていた気がするのは気のせいだろうか。

ーーーーーーー


4時間目が始まり、最後の科目である数学の先生がクラスに入ってくる。一瞬にしてクラスに緊張感が走り、静かになる。うちのクラスはどうも数学が苦手なやつが多いらしい。

今回のような2年の期末テストというのは、これからくる成績表に多大な影響を及ぼすので、これから受験生になる俺たちとしては何としても赤点だけは回避したい。テスト前のクラスメイト達は必死だった。それは同居人達も同様で、正に必死になっていたのだった。

俺は数学は比較的得意なので個人で放課後に勉強会を開いたり、LINEなんかで問題の解き方を図解で教えたり、同居人達にみっちり夜中まで教えたりと、かなり頑張りました。


(結果、風邪こじらせてぶっ倒れちゃったけど)


テスト中の修羅場を思い出し、軽くため息をつく。

気づけばもうテスト返しが始まっている。皆はどうしているかと周りを見渡してみたが…


「は、はる?何やってんの?」


黒ピンをクロスに合わせて作った即席十字架を両手に持ち、机に突っ伏してそれを頭上に掲げている。近づくとブツブツと何事かを呟いているのが微かに聞こえた。

これは触れないでおこう、と決めた時、両足が急に重みを増したのに気づく。


「なんだ…ってれお!それにはな⁉︎」


「まさちゃああぁぁんんん」


「Zzz」


下を見ると花之介と半べそをかいている伶織がそれぞれ足にしがみついていた。重い。動けない。


「まさちゃ〜〜んん数学こわいよおぉぉ」


「Zzz」


「泣くなしがみつくな取り敢えずどけ!てかはなは寝ながらどうやってしがみついた⁉︎」


うろたえ過ぎる同居人兼幼馴染達の様子を見て、呆れるしかない俺だった。

ーーーーーー


「はああぁぁぁ…バクテリアになりたい…」


世にも珍しい願望をため息と共に吐き出しながら俺は足を引きずるようにしながら帰路についていた。


「なんで数学…自信あったのに…なんで99点なんだよ1点どこいった…」


俺がグロッキーになっている理由はこれ。今回は数学で初の100点いけるんじゃね?とか調子にのっていた結果、99点でした。


「サービス問題の引き算で出来るとこ間違えるんだもんなぁ…180➖160を30ってなんだよ俺ほんとなんなの…ほんと遺伝子からやり直したい」


今回のテストはかなり難しかったが伶織も榛樹も、もちろん花之介も赤点は回避できた。伶織と榛樹はかなりギリギリだったけど。

そんな中1人99点でorz状態で落ち込んでいたら皆から怒られてしまった。


「そりゃ点数は高いだろうけど…自信あったぶん落ち込むよ…こんな時に皆は何故か先帰っちゃうし」


よろよろと帰る準備をしていたら同居人達は酷く急いだ様子で先に帰ってしまった。1人で帰るのは久しぶりで、吹く風が妙に冷たく感じる。


「はぁ…早く帰ろう」


皆の居る家へと急ぐために足を速めた。どんどん暗くなっていく気持ちを抑えようと胸元をぎゅっと握りしめる。もう、俺は1人じゃ無いんだと自分に言い聞かせながら。

ーーーーーー


「や、やっと着いた…」


肩で息をしながら家の前に立つ。家から高校までは片道一時間弱と大して遠いわけでは無いが…なぜか今日に限って電車はことごとく遅れ、やっと乗れたと思ったら痴漢を目撃し放ってもおけなくて犯人を突き出し、道を歩いているとお婆さんがバッグのひったくりに合っているところに遭遇して犯人と追いかけっこをして、何とかバッグを取り返したら今度はお婆さんがひったくりに合った時に足をひねってしまっていておぶって家まで届けたり…とにかく様々な苦労があった。


「なんなんだよもー!!今日は厄日か⁉︎俺の不幸体質め…っ」


半泣きになりながら肩を落として玄関の扉を開ける。すると。


「まさちゃーーーーん!!!」「まさちゃん、」「まさ!」


「「「おかえりー!!」」」


「え…?」


鳴り響くクラッカー音と共に散る紙片。扉の向こうには満面の笑みでこちらを見つめる同居人達の姿があり、俺はただ驚く事しか出来ない。


「ほらっまさちゃん早く入って入って」


伶織に促されて、今だに驚いて動けないでいる俺を引っ張るようにして3人に中に連れて行かれ、リビングのテーブルに座らされる。

テーブルの上には様々な料理が並んでいた。少しだけ形が崩れていたり焦げていたりするものもあるが、手作り感満載のそれらはもちろん俺が作ったものではない。


「な、なに?今日なんかの記念日か何か?」


「今日はね、まさちゃんへのありがとう会なの」


「ありがとう会ー」


「え?」


伶織が少しはにかみながら言って花之介が反復した言葉に、俺は戸惑いを隠せなかった。


「ありがとう会って…なんの?俺なんかしたっけ?」


「まさってば自分の勉強で忙しいのに倒れるまでオレ達に勉強教えてたろ?それだけじゃなくてもいっつも家事してくれたりさ。」


「だから今日はまさちゃんに感謝する日なの!」


「いつもありがとな、まさ」


微笑みながら榛樹が言う。よく見るとその手には絆創膏が巻かれ、Yシャツには料理を作る時についたであろうケチャップのシミがある。そしてそれは他の二人も同様で。


「は、はる…れお、はな…!」


「あーまさちゃん泣いてるー!」


「泣いてるー」


「ばかっ泣いてねーよ…っ」


確かにテスト期間中はもう寝てしまいたい辛い、と思った事もあった。それでも皆頑張ってくれて、ちゃんと結果も出て。それだけでも頑張って良かった、と心から思うのに、こんなの。


(反則だろ…っ)


堪らなく嬉しくなって幼馴染達に勢いよく抱きつく。さっきまでの鬱々とした気分はどこへやら、綺麗さっぱりなくなって、代わりに温かい物で胸が満たされていく。


(あーもー!今日は最高の日だ!)


その日俺は、気が済むまで力一杯この素晴らし過ぎる同居人達を抱きしめ続け、また俺に出来ることがあればなんでも力になろうと決意した。






読んでくださりありがとうございました!今回はBL要素が少なかったのですが、同居人達が日々を楽しんでいるのが伝わればいいなと思います。

またお会いできることを願っています!

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