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 急カーブを曲がることに気を取られていて、カーブの先にある駐車場の入り口を通り過ぎてしまった。

「あ、駐車場過ぎた」

 後部座席の古泉が遠ざかる第一駐車場を振り返って言った。そこには休憩所らしき丸太小屋があった。

「わああ、Uターン、Uターンしないと」

「落ち着いて。駐車場はまだあるんでしょ。次の所に止めればいいよ」

 慌てだした天水を鷹見がなだめた。

「第二駐車場は右側に入り口がある。後ろから車は来てないし、ゆっくりでいい」

 そう言った古泉の手にはコピー用紙がある。助手席の鷹見が振り向いて、

「何それ?」

「この辺の案内図です。パソコンで調べました」

 だから駐車場の入り口の位置がわかったのかと納得した。

「見せて」

「天水、見せてもいい?」

「だめ」

「だそうです」

「ええ? なんで?」

「この案内図、絵が描いてあるんですよ」

「ああ、どうせだから先に実物を見ろってこと?」

「左様です」

「左様ですか」

 天水の運転は慎重になり、周囲のゆったりと眺めることができたが、道路よりも両側が高くなっているので前方だけ遠くまで見えた。彼女たちが伏せているものがなんなのか、まだわからない。

 対向車を必要以上に警戒して、第二駐車場に入った。広いわりに他に車はなく、駐車位置を示す白線は消えかけていた。律儀なのか神経質なのか、何度か調整し見えづらい白線に合わせて車を止めた。三人は車から降りた。

「天水、おつかれさま」

「おつかれ」

 二人は運転手をねぎらった。

「あー、空気がおいしい?」

 天水は両手を挙げて背伸びをした。慣れない長時間の運転で疲れたのだろう。

 おいしいかはわからないが、確かに空気が違うと鷹見は感じた。真昼の目映いほどの日光を浴びているのにあまり暑くない。この高原は避暑地として利用されていて、中腹には別荘が多いらしい。

 駐車場からは麓の町や近くの山が一望できて、斜面の方には丈夫そうな手すりがある。古泉と天水が手すりに寄っていって、町の方を指さしながら話し始めた。

「こんなに上ってきたんだ」

「町が小さい」

「天気がいいと海も見えるって書いてあったけど」

「海の方だけ見えない」

「靄かな」

「だろうね」

 鷹見は二人の後姿を撮ろうと思った。デジタルカメラで写真を撮ってからその写真を参考にして二眼レフカメラの露出を決める。それから、カメラをまっすぐ持って正方形のファインダーをのぞきこむ。

 少しずつ動いて、ファインダーと二人の方を交互に見ながら構図の調整をした。彼女は構図を決めるこの時間が好きだった。いくつかの手順を経て、あとはシャッターを切るだけ。時間をかけて構図を決め、願うような気持ちでシャッターボタンを押す。そんな手間がかかるからこそこのカメラを使っている。

 写真を撮ってから、二人の隣に並んだ。

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