理由
すると両開きの大きな玄関が 静かに開いた
そしてスーツ姿の男性が 軽く一礼して言った
「公太坊ちゃん お帰りなさい」・・・と
この日から いや正確には 神社で倒れた
あの日からだった 僕の生活が変わったのは
学校に行けば 僕の周りには友達が何時も居て
給食も一緒に食べて 昼休みになると運動場で
皆とドッチボールをして遊んだ
そして休みには 僕の家に遊びに来たいと
友達から せがまれて家に招待した事もあった
施設に居た頃とは違い 毎日が楽しかった
こんな楽しい毎日を送れるのも 全てお姉さん
のお陰だった 僕は お姉さんに感謝していた
言葉にする事は 出来なかったけど・・・
僕は恩返しに勉強を頑張ろうと 思った
今の僕には それしか出来ないからだ
そして月日は流れ 僕は県で一番の進学校と
評判の高校に 何とか入学する事が出来た
お姉さんも執事の海堂さんも まるで自分の事
の様に喜んでくれた
本当に幸せだった 自分が帰る家があり 僕が
帰るのを 待ってくれる人達が居る
それが僕には 嬉しかった
だけど 未だに「お母さん」と呼ぶ事が出来な
かった それは聞きたくても聞けない事が原因
だった それを聞いてしまうと お姉さんは
居なくなり 今の生活も壊れてしまいそうで
恐かったから・・・
でも本当は「お母さん」と呼びたい自分に
気付かないフリをしていた
そんな 僕自身を 許せなかった・・・