誰かいる
スティーブンは、恐怖におびえていた。
スティーブンは宇宙飛行士である。太陽系を抜け出て、新たなる惑星を探すべく、冷凍睡眠状態で、宇宙の海へと旅立ったのだ。
予定では、49年後、彼は目覚め、天文学者が名付けた、地球型惑星アフロディーテに降り立つはずだった。
ところが目覚めた彼は、無機質な計器が示す数字を見て、愕然とした。
自分が178年も眠り続けていたことに。
計器の故障かもしれない、と思い、スティーブンはマニュアルに従って操作するが、エラーは見当たらない。他のデーターを参照するが、やはり178年後というのは、間違いないようだ。
レーダーを見ると、アフロディーテどころか、小惑星一つない、宇宙の真っただ中を漂っていた。
さきほどから、地球に向けて通信を行っているが、反応はない。
もしかすると、もう愛すべき母星は、なくなっているのかもしれない。
だが、それも覚悟の上だった。
たとえ人類の最後の一人となったとしても、新たなる惑星を探し出し、降り立つ。それがスティーブンの夢だった。
そう、最後の一人となったとしても。
だからこの程度のことは、スティーブンの中では想定内だった。覚悟もしていた。
だが……
この宇宙船は一人乗りだ。
地球を飛び立ち、安定航行に入ったのを確認してから、自らコールドスリープ状態に入った。
そのときは、このような異常はなかった。
178年前の記憶だが、間違いない。
なのに……
スティーブンは、鏡に映る自らの顔を見て、叫んだ。
「俺の顔に、落書きをしたのは、一体誰なんだーっ!?」
火浦功『奥さまはマジ』のあとがきネタを参照にさせていただきました。




