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誰かいる

作者: 水守中也
掲載日:2010/07/01

 スティーブンは、恐怖におびえていた。


 スティーブンは宇宙飛行士である。太陽系を抜け出て、新たなる惑星を探すべく、冷凍睡眠状態で、宇宙の海へと旅立ったのだ。

 予定では、49年後、彼は目覚め、天文学者が名付けた、地球型惑星アフロディーテに降り立つはずだった。

 ところが目覚めた彼は、無機質な計器が示す数字を見て、愕然とした。

 自分が178年も眠り続けていたことに。

 計器の故障かもしれない、と思い、スティーブンはマニュアルに従って操作するが、エラーは見当たらない。他のデーターを参照するが、やはり178年後というのは、間違いないようだ。

 レーダーを見ると、アフロディーテどころか、小惑星一つない、宇宙の真っただ中を漂っていた。


 さきほどから、地球に向けて通信を行っているが、反応はない。

 もしかすると、もう愛すべき母星は、なくなっているのかもしれない。

 だが、それも覚悟の上だった。


 たとえ人類の最後の一人となったとしても、新たなる惑星を探し出し、降り立つ。それがスティーブンの夢だった。

 そう、最後の一人となったとしても。


 だからこの程度のことは、スティーブンの中では想定内だった。覚悟もしていた。

 だが……


 この宇宙船は一人乗りだ。

 地球を飛び立ち、安定航行に入ったのを確認してから、自らコールドスリープ状態に入った。

 そのときは、このような異常はなかった。

 178年前の記憶だが、間違いない。


 なのに……


 スティーブンは、鏡に映る自らの顔を見て、叫んだ。

「俺の顔に、落書きをしたのは、一体誰なんだーっ!?」


火浦功『奥さまはマジ』のあとがきネタを参照にさせていただきました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 思わず笑ってしまいました。 それまでのシリアスさと、ラストのちょっと下らない感じのギャップが凄くいいです。
[一言] いや驚きました。まさかこんなところで火浦功の名前に出くわすとは思っていませんでした。私は大好きです、あの作家さん。 あ、『奥さまはマジ』ももちろん持ってますよ。後書きを読み直しちゃいました(…
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